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ガイドライン・広告品質 公開日:2024.06.24

ユーザーボイスから考えるジェンダー表現――世界の動向や、企業に求められることとは?

その他

性別に対するステレオタイプは「ジェンダーバイアス」と呼ばれ、男女の性別に応じた役割の固定、思い込みや先入観などが、性別に対する社会的な差別や偏見、性的マイノリティー等の人々への差別や偏見などを助長するものとして昨今注目を集めています。

 

ジェンダーをとりまく世界的な動向をはじめ、Yahoo!広告に日々寄せられているユーザーボイス(※)の中から、ジェンダー表現に関する声を取り上げ、広告制作における対策のポイントを探ります。

 

 

※ Yahoo! JAPAN IDの有無にかかわらず、誰でもYahoo!広告に対するご意見・ご感想を記載いただけます。今回取り上げている内容は、2023年9月から2024年2月までに寄せられた声を集計したものがベースとなっています。

目次

ジェンダー平等は世界共通の目標

「ジェンダー(gender)」とは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性や相互関係を意味します。こういった社会的属性や機会、関係性は社会的に構築され、社会化される過程において学習されるものです。これらは時代や背景に特有であり、変化しうるものです(※)。

 

2015年に国連総会で採択 された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)でも、「ジェンダー平等」の実現が目標の一つとして掲げられています。

 

※ 参照:国連女性機関(UN Women) Webサイト

「ジェンダー平等」とは、「性別に関わらず、平等に責任や権利や機会を分かちあい、あらゆる物事を一緒に決めてゆくこと」(※)を意味します。その実現に向け、社会的・文化的につくられた性別 (ジェンダー) を問い直し、すべての人の人権を尊重し、個性と能力を十分に発揮することができる社会づくりのための取り組みが行われています。

 

※ 引用:内閣府男女共同参画局作・SDGsとジェンダー平等に関する副教材「みんなで目指す!SDGs×ジェンダー平等」(PDF)

広告におけるジェンダー表現の動向

世界的に進む「ジェンダー平等」の実現の中で、広告業界における2つの取り組みを紹介します。

カンヌライオンズ「Glass: The Lion for Change」

世界最大規模の広告祭であるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでは、2015年に「性差別や偏見を打ち破るクリエイティブ」をたたえるための賞「Glass: The Lion for Change(グラスライオン)」を新設しました。本賞は、世界の女性の社会進出を支援するNPO法人「LeanIn.org」が協賛。マーケティングや広告が人々に与える影響を社会への責任として認識し、広告も社会課題の解決に積極的にかかわるべきであるという価値観が背景にあります。

イギリスの広告基準協議会(ASA)による規制

イギリスの広告基準協議会(ASA) は、2019年に「深刻もしくは広範な被害」につながる可能性のある「性別にもとづく有害なステレオタイプ(世間的固定概念)」を使った広告を禁止しました。例えば、男性がくつろぐ間に女性が掃除していたり、男性がおむつ替えに失敗したりするといったステレオタイプに基づくシナリオを用いた広告を制作することはできません。背景には、一部のステレオタイプに基づく表現が、「人の可能性を狭める」一端を担いかねないとの考えがあります。

世界的な広告への取り組みが進む中で、日本の広告はユーザーにどのように受け取られているのでしょうか。Yahoo!広告に寄せられたユーザーボイスを一部紹介します。

Yahoo!広告に寄せられたジェンダー表現に関するユーザーボイス

2023年9月~2024年2月にYahoo!広告に寄せられたユーザーボイスを分析し、ジェンダーに関する声を分類しました。そのうち、特に目立ったものは以下の声でした。

ジェンダー表現に関するユーザーボイスの分類

・女性の描かれ方が性的対象や女性蔑視として受け取れる恐れのある表現への声
・性別による役割が固定化されているように受け取れる恐れのある表現への声
・容姿について理想像を押し付けているように受け取れる恐れのある表現への声

実際にどのようなコメントが寄せられているか、分類ごとに紹介します。

ユーザーボイスの一例

※ 実際に投稿されたユーザーボイスから表現を一部変更しています

女性の描かれ方が性的対象や女性蔑視として受け取れる恐れのある表現への声

・胸の大きい女性の胸を強調した画像を呼び込みに使用したセクハラ広告


・明らかに男性を対象とした性的な広告であり、女性に対するセクハラに該当する


・たとえ表現の自由とはいえ、女性蔑視もはなはだしく、非常に不愉快

性別による役割が固定化されているように受け取れる恐れのある表現への声

・家政婦的行動が女性の美学として描かれているのも差別的


・子育てママではないので(正確に言うと、子育てママになれなかったので)、この類の広告を見せられると辛い

 

・「建築=男性」「建築=力技」のような印象を植え付けてしまう。本当に古い発想の価値観

容姿について理想像を押し付けているように受け取れる恐れのある表現への声

・女性の容姿を蔑視するような内容で、繰り返し表示されることに強い不快感がある


・ルッキズムとセクシズムを助長する恐れがある内容

※ 映画、コミックなどのエンターテイメント作品自体に対する声ではありません。
※ 過度な肌露出がある表現や性に関する表現が露骨なものについては、広告掲載基準に基づき掲載をお断りしています。上記は、弊社の審査基準に抵触しないような広告表現に対する声をご紹介しています。

企業に求められることは?

では、企業はどのような意識を持ち、広告制作に向き合うのがよいか。3つのポイントを紹介します。

ジェンダーニュートラルな考え方を持つこと

性を蔑視した表現や、役割の押し付けなど、ジェンダー表現に寄せられる意見は、上記のユーザーボイスでも紹介しました。

 

まずは性別にとらわれずに、ユーザーの多様な個性を尊重していく姿勢を持つことが重要です。性別に関係なく平等、公平で誰もが「ありのままの自分」で生きることができる居心地のよい社会をつくるには、中立的な考え方や取り組みが求められます。

社内教育の実施や組織デザインのあり方の再考

ステレオタイプは、企業や人を縛ったり、型にはめたりすることで、イノベーションや自由な発想を遠ざけます。


また、ステレオタイプを描く商品やブランドからは、消費者も離れていきます。偏ったジェンダー表現は悪意がなくても無意識に想起してしまう可能性があるため、定期的な社内教育や、ダイバーシティーを保ちながら多様な視点で議論できる組織のデザインなどの対策が求められます。

ガイドラインやチェック体制などの定期的な見直し

インターネット、SNSが普及する世の中では、国内外に情報の垣根がなくなっています。話題を集める広告は世界に知れ渡る可能性もあるため、世界基準を意識した取り組みが求められるようになると考えられます。

例えばUN Women(国連女性機関)では、審査項目の中に以下の「3つのP(※)」を設けています。

 

・多様な人々が含まれているか(Presence)
・男性と女性の視点を平等に取り上げているか(Perspective)
・人格や主体性がある存在として描かれているか(Personality)

 

※参照:UNSTEREOTYPE ALLIANCEJAAA REPORTS

こうした取り組みを踏まえ、広告主や広告会社も表現の見直しや対策を行う必要があります。

 

「3つのP」などの指標に照らし合わせて自社広告を見直す、あるいはガイドラインを策定するなどの取り組みが、今後国内においてもより強く求められるようになることが想定されます。


また、ガイドラインやチェック体制をすでに策定している場合でも策定して終わりにするのではなく、社会の変化や潮流を捉えて定期的に見直す必要があります。

まとめ

広告表現は徐々に多様性をくみ取った方向に向かっています。しかし、長年にわたって無意識のうちに刷り込まれてきたステレオタイプを打破することは困難です。ジェンダーや多様性を理解することは、一朝一夕には難しいかもしれません。

 

また、ジェンダーを扱えば炎上すると考える人もいるかもしれませんが、あらかじめ対策を取ることで炎上を防ぐ可能性も高まります。ジェンダーへの理解を示すことで、ユーザーからの支持を得られることもあるでしょう。意図しない誤解や傷つく人を生みだしてしまう広告表現とならないよう、対策をしていきましょう。

マーケティング事業におけるDE&I推進

LINEヤフーでは今までと変わらずユーザーの皆さまの気持ちを尊重しつつ、広告主・代理店の皆さまと一緒に考えながらDE&Iを推進してまいります。

 

DE&Iやジェンダーの考え方への理解を深めるため、今後もユーザーボイスの分析結果など、関連情報の発信を予定しています。ぜひ広告制作の参考にしてください。

参考
・UNWOMAN日本事務所(https://japan.unwomen.org/ja/news-and-events/news/2018/9/definition-gender
・西村直哉. 成果・イノベーションを創出する ダイバーシティマネジメント大全. クロスメディアパブリッシング. 2020
・男女共同参画推進連携会議(事務局:内閣府男女共同参画局)(https://www.gender.go.jp/public/subtextbooks/pdf/subtextbooks.pdf
・UNSTEREOTYPE ALLIANCE(https://www.unstereotypealliance.org/en/resources/research-and-tools/3ps-unstereotype-marketing-communications-playbook
・JAAA REPORTS(https://jaaareports.jaaa.ne.jp/post/business-2401

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