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アンコンシャス・バイアスとは│広告における影響や対策について
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)が、マーケティング活動における組織の判断や意思決定において障壁になることがあります。アンコンシャス・バイアスによって立場が異なる人に対する理解力や共感力が働かず、発信する側が意図しない形で相手を否定することにつながり、偏見や差別を助長してしまう可能性があるからです。
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進していく第一歩として、広告におけるアンコンシャス・バイアスの作用や影響について説明するとともに、対策について考えていきます。
目次
1.アンコンシャス・バイアスとは?
人は何かを見たり、聞いたり、感じたりした時、「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があります。アンコンシャス・バイアスとは、こうした無意識の偏見や思い込みを意味する言葉で、「アンコンシャス=無意識」と「バイアス=先入観や固定観念、思い込み」を組み合わせた造語です。
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)は誰にでもある
上記の画像を見て、どんな人物像を思い浮かべるでしょうか。「白バイ隊員だから、男性だろう」と考えた人もいるかもしれませんが、それこそがアンコンシャス・バイアスです。
アンコンシャス・バイアスは、これまで見聞きしてきた経験を照らし合わせ、「この人は○○だから、こうだろう」「普通は△△だから、こうだろう」というように、あらゆるものを自分なりに解釈するという脳の機能により引き起こされます。日常においてはありふれた考え方で、誰しも経験があるものです。
つまり、アンコンシャス・バイアスを持つこと自体が悪いわけではなく、問題なのは、気づかないうちに決めつけたり、他者に押しつけたりしてしまうことです。
同じ情報に触れても、一人ひとりの「解釈」は異なります。それぞれが持つアンコンシャス・バイアスがきっかけとなり、無意識のうちに相手を傷つけ、苦しめている可能性があります。まずはアンコンシャス・バイアスというものを知り、意識することが大切です。
2.アンコンシャス・バイアスの種類や具体例
アンコンシャス・バイアスの代表的な種類や具体例について紹介します。
アンコンシャス・バイアスの種類
ステレオタイプバイアス
人の属性や一部の傾向に対する先入観や固定観念により、「みんなそうだ」と思い込む傾向がステレオタイプバイアスです。特に、性別に対する思い込みは「ジェンダーバイアス」と呼ばれ、男女の性別に応じた役割の固定、思い込みや先入観などが、性別に対する社会的な差別や偏見、性的マイノリティー等の人々への差別や偏見を助長するものとして注目を集めています。
・男性は外で働き、家事育児は女性がやるもの
・看護師と聞くと女性を思い描く
・九州の人はお酒に強い
ステレオタイプバイアスが作用すると、先入観によって判断を誤ったり、社会の常識と乖離がある発言、不適切な表現をしてしまう可能性があります。
確証バイアス
無意識のうちに自分の考えを肯定するものや自分が期待する情報だけを集め、逆に自分の考えに合わない情報は軽視したり排除してしまう傾向のことを、確証バイアスといいます。
・自分の意見や考えにそぐわない情報は無視する
・一度決めてしまうと、他者の意見などに聞く耳を持たない
・購入や導入を決めると、その商品・サービスの良い面しか目を向けなくなる
確証バイアスが作用すると、客観的な事実を否定してしまい、誤った意思決定をする原因となります。
慈悲的差別
自分より立場が弱いと思う他人に対し、本人の意思を確認せず、良かれと思って行う配慮や気遣いが、意図せず差別につながってしまうことを慈悲的差別といいます。
・障がいのある人は助けるべきだと思い込む(本人は同等に扱ってほしいと思っていても)
・子どもがいる女性に役職登用は負担になると考え、候補から外してしまう
こうした慈悲的差別は、本人は配慮だと思っていても相手を傷つけてしまうリスクがあります。
集団同調性バイアス
集団に所属することで同調傾向・圧力が強まり、周囲に合わせて集団内の人たちの言動に同調し、同じように行動してしまうのが集団同調性バイアスです。
・コンプライアンス違反やハラスメント的な指導が常態化しているが、誰も意見しないから自分も黙っている
・「みんなが言っている」ならば、それが正解だと考える
少数派の意見を埋没させてしまうため、有益な議論やアイデアが生まれず、組織の成長を阻んでしまう可能性があります。
正常性バイアス
予期しづらい事態や危機的状況が起きた時、先入観や思い込みにより正常の範囲内だと捉えて「このくらい問題ない」「自分は大丈夫だ」と思い込むことが正常性バイアスです。
・自分に限って災害に巻き込まれることはないと思い込む
・火災報知器が鳴っているが、防災訓練だろうと考える
・トラブルが起きたとしても、すぐにおさまるだろうと思い込む
「大丈夫だろう」という先入観や思い込みにより、例え緊急事態でも対処が遅くなってしまうという大きな問題が起こってしまいます。
他にも…、
・権威のある人や専門家の言動がすべて正しいと思い込んでしまう権威バイアス
・変化を避けて現状維持を求めてしまう現状維持バイアス
・特定の顕著な特徴が、全ての評価に影響してしまうハロー効果
・自分を必要以上に過小評価し、否定的に捉えてしまうインポスター症候群
など、アンコンシャス・バイアスにはさまざまな種類があります。
現在、多様な人材が活躍できる環境づくりが社会的にも重要なテーマになっており、さまざまな価値観を受け入れる組織が、競争優位性を発揮する事例も増えています。
アンコンシャス・バイアスを意識しなければ、SNSやメディアで炎上などの大きなトラブルや組織力の低下を招く可能性があります。アンコンシャス・バイアスという作用が存在することを認識し、内容や影響を理解しましょう。
3.広告におけるアンコンシャス・バイアスがもたらす影響は?
広告は社会に影響を与える力を持っています。しかし、ときにアンコンシャス・バイアスを含んだ表現や配信で意図せず不快感や疎外感を与えたり、新たな偏見や差別をつくりだしたりする危険性もあります。
広告の影響やリスク
広告を受け取る側であるユーザーにもアンコンシャス・バイアスがありますが、広告はそれをつくり出している一つの要素となり得ます。具体的に、どんな影響が考えられるか。ユーザーや社会、企業に与える影響やリスクについて、それぞれ説明します。
ユーザーや社会への影響
・不快感や疎外感を与えてしまう
「○○はこうだ」などのレッテルや決めつけで、多様なユーザーの価値観や社会の常識とズレが生じ、不快感や疎外感を与えてしまう可能性があります。
・新たな偏見や差別をつくりだす
広告に偏見や差別的な表現が含まれていた場合、自分事として認識したユーザーが社会から排除されたと感じてしまうばかりか、その偏見や差別自体が社会で一般的なものとして広がってしまう可能性もあります。
企業への影響
・信頼低下や炎上などのレピュテーションリスク
多様なユーザーのニーズや社会の常識とズレが生じることで、信頼関係の悪化、偏った情報発信による炎上などを引き起こす可能性があります。
・イノベーションの妨げになる
常識が固定化して新しい発想が生まれず、イノベーションが起こりづらくなります。
広告表現におけるアンコンシャス・バイアスの具体例
広告表現においてもアンコンシャス・バイアスに注意する必要があります。具体的には、以下のようなものが考えられます。
性別に基づく伝統的な役割分担、性別や年齢による偏見、差別表現
例)家事や育児は女性だけがするというイメージを想起させるような表現
→ 女性を応援したいなどの意図があったとしても、役割を押し付けてしまう可能性がある
体型、容姿など身体的特徴に基づく偏見、差別表現
例)「このままじゃダメ」などの現状に否定的な表現や一方的な理想を押し付ける表現
→ 身体的特徴にネガティブなイメージを与え、社会からの疎外感を与えてしまう可能性がある
家族構成に対する先入観などによる偏見、差別表現
例)「お父さん/お母さん」「子育て世代」など、結婚や子どもがいることが当たり前の表現
→ 独身の人、結婚していても子どもがいない人、同性婚の家族の人などに社会的な差別と捉えられてしまう可能性がある
4.アンコンシャス・バイアスの解消や対策は?
アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているもので、完全に解消することはできません。しかし、気付くことさえできれば、それを認識したうえで対策を考えることはできます。
例えば、「普通は〇〇だ」という決めつけの言葉、「こうあるべきだ」という押し付けの表現については、相手が自分の考えと同じとは限らないことを自覚しましょう。そして、発信する内容が、相手にとって「決めつけ」「押し付け」になる可能性がないかを意識してみましょう。
広告におけるアンコンシャス・バイアスへの対策
インターネットやSNSなどの普及によって、個人でも広範囲に情報を発信できるようになりました。昨今のDE&Iの意識の高まりとともに、発信者に多様性を否定したり誰かを差別したりする意識がなかったとしても、さまざまな人から非難を受けるリスクも高まっています。
広告も同様、多くの人が目にする情報です。トラブルやリスクを未然に防ぐためには、DE&Iの観点から視野を広げ、ユーザー一人ひとりの異なる多様な特性や価値観を尊重し、広告に触れてどのように感じる人がいるかを考えてみることが必要です。
個人として理解・自覚することはもちろん、企業や組織としてもアンコンシャス・バイアスにとらわれないよう、多様な視点から客観的な意見が生まれる組織づくりも重要です。
アンコンシャス・バイアス解消のために企業ができること
アンコンシャス・バイアスを解消するために、企業や組織でどのような取り組みが必要なのか、以下の例を元に考えてみましょう。
・社内外の研修やワークショップで学ぶ機会を設ける
・意思決定や行動に変容を起こす仕組みやコミュニケーションをデザインする
・豊富な知見を有する専門家への相談など、外部リソースなどを活用する
・ユーザーの意見を取り入れる仕組みをつくる
5.多様な人が触れる広告にはDE&Iの尊重が必須(まとめ)
広告にはアンコンシャス・バイアスを増幅させてしまう事例もある一方で、打破する力も持っています。社会に大きな影響を与える力を持ち、多様な人が触れる広告だからこそ、DE&Iの尊重が必須となります。
アンコンシャス・バイアスによって傷つく人々を生まないため、企業のブランドを傷つけるような事態を避けるためにも、個人や組織が抱えているアンコンシャス・バイアスと向き合い、差別や偏見をアイデアと広い視野で超えていきましょう。
LINEヤフーでは今までと変わらずユーザーの皆さまの気持ちを尊重しつつ、広告主・代理店の皆さまと一緒に考えながらDE&Iを推進してまいります。
DE&Iの考え方への理解を深めるため、今後もユーザーボイスの分析結果など、関連情報の発信を予定しています。ぜひ広告制作の参考にしてください。
参考
・谷口真美. ダイバシティ・マネジメント 多様性をいかす組織. 白桃書房. 2023
・西村直哉. 成果・イノベーションを創出する ダイバーシティマネジメント大全. クロスメディアパブリッシング. 2020
・アンコンシャスバイアス研究所(https://www.unconsciousbias-lab.org/unconscious-bias)
・日本労働組合総連合会(https://www.jtuc-rengo.or.jp/action/diversity/)
・内閣府男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/pdf/202105.pdf)
・朝日新聞デジタル(https://www.asahi.com/sdgs/article/14770111)
・福岡県人づくり・県民生活部 女性活躍推進課(https://joseikatsuyakuoentai.pref.fukuoka.jp/unconscious_bias/about/)
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