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【DE&I調査レポート】アンコンシャス・バイアスを含んだ広告に、ユーザーは何を思うか?
世の中のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)への意識は年々高まり、日本国内の各企業における方針やさまざまな施策も、昨今はDE&Iを強く意識したものとなっています。
広告においても、クリエイティブ制作などの際にはDE&Iを意識し、広告に接する誰もが不快な思いをすることなく、商材の魅力が伝わるような表現が求められます。しかし、ユーザーによっては、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)」を含むと感じられる可能性がある広告も散見されるのが現状です。
LINEヤフーは、全国のインターネットユーザー(以降、ユーザーと表記)約 3,000人を対象に、広告におけるアンコンシャス・バイアスについてのアンケートを実施。アンコンシャス・バイアスが含まれる広告に接した経験や、該当する広告に対するユーザーの思いについて調査しました。
DE&Iは、Diversity Equity&Inclusion(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の略です。
【D】ダイバーシティ(多様性)
【E】エクイティ(公平性)
【I】インクルージョン(受容・包括性)
多様な人がいる世の中で違いを認め合い、それぞれの人にあった対応をすることで、一人ひとりの能力を最大限に活かし、誰もがいきいきと暮らしていくための考え方です。
アンコンシャス・バイアスは、「アンコンシャス=無意識」と「バイアス=先入観や固定観念、思い込み」を組み合せてできた造語で、無意識の偏見・思い込みのことです。
私たちは何かを見たり、聞いたり、感じたりした時に実際にどうかは別として「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があり、これを「アンコンシャス・バイアス」と呼びます。
目次
広告に「不快感や違和感を抱いた経験あり」は2割超
広告表現におけるアンコンシャス・バイアスに不快感や違和感を抱いた経験の有無について聞いたところ、全体の2割以上のユーザーが【経験したことがある】と回答しました。
また、年代別でみると、18~29歳では26%が【経験したことがある】と回答しており、年代が低いほど経験した割合が高くなる傾向があります。
では、ユーザーはどんな内容の広告表現にアンコンシャス・バイアスを感じて、不快感や違和感を抱いたのでしょうか。17の類型から選んでもらいました(複数回答)。
その結果、【性別】に関する内容で広告に不快感・違和感等を抱いたユーザーが37%で最も多く、次点の【身体的特徴】(36%)【性的指向】(32%)までが30%超となっています。
以下は、男女別での回答割合の比較です。【性別】についての広告表現は、不快感や違和感を抱いた女性ユーザーの割合が、男性ユーザーよりも10%以上高いという結果となりました。
性別の他に大きな差があった項目は【職業】で、この項目については男性の回答割合が女性より約16%大きくなっています。
不快感や違和感、疎外感などの感情を抱いた理由や、具体的な広告の内容についてもフリーコメントで記載いただき、「女性に対する蔑視や軽視」「性別、年齢での決めつけや押しつけ感のある表現」「外見や身体的な特徴に対する否定的な表現」「家族や夫婦の形の先入観」など、発信する側が意図しない形でユーザーを否定していると思われるもの、偏見や差別を助長するような広告表現に対する回答が寄せられました。
ユーザーはさまざまな項目で不快感・違和感を抱いており、人によって広告の受け取り方も変わるということが分かります。
広告そのものや、企業に対して不快に感じたユーザーが7割超
それでは、アンコンシャス・バイアスが含まれる広告を見たユーザーは、どのような感情を持ったのでしょうか。各項目に対して「あてはまる」「ややあてはまる」「ややあてはまらない」「あてはまらない」から回答してもらいました。
【広告そのものに対して不快に感じた】に「あてはまる」「ややあてはまる」と回答したユーザーが78%と、全項目の中で最も高くなりました。次に【広告を出した組織や企業に対して不快に感じた】ユーザーの割合が大きく、72%でした。
自社内にたくさんある商材の中のひとつのクリエイティブであっても、出稿元である組織・企業への不快感につながる可能性があるため、アンコンシャス・バイアスを含んだ広告になっていないかを意識して広告を制作することの重要性が伺えます。
アンコンシャス・バイアスに配慮された広告に「好意的」
一方、アンコンシャス・バイアスに配慮された広告についてはどう感じるのでしょうか。
アンコンシャス・バイアスに配慮した広告に接触した経験の有無については、全体の26%が「これまでに経験したことがある」と回答。不快感・違和感を抱いた経験があるユーザーの割合(22%)よりやや高い結果となっています。
年代別にみると18~29歳では「これまでに経験したことがある」の回答割合が28%で、他の年代と比較して少し高くなっています。
また、この設問と、先ほどの「広告においてアンコンシャス・バイアスに不快感や違和感を抱いた経験」のいずれかに「経験がある」、もしくは両方に「経験がある」と回答したユーザーを集計した結果、アンケートの回答者全体の3割となりました。
広告に接しているユーザーの3割が、DE&Iの観点で広告に何らかの思いを抱いたり、DE&Iに関心を持っているという事実を受け止め、施策を推進していくことが重要となりそうです。
アンコンシャス・バイアスに配慮された広告に対する感情や行動については、項目ごとの全体値を比較すると、【広告そのものに対して好意的に感じた】ユーザーの割合が64%となっており、全項目の中で最も高い結果となっています。
次に「あてはまる」の割合が高いのは、【広告を出した組織や企業に対して好意的に感じた】の61%でした。
アンコンシャス・バイアスによる不快感・違和感を抱いた際の感情や行動と合わせ鏡のような傾向とも言えそうです。
まとめ
マーケティング活動において広告は、社会にインパクトを与える影響力を持っており、ときに無意識の偏見・思い込みを含んだ表現や配信で、意図せずユーザーに不快感や疎外感を与えたり、新たな偏見や差別を生んだりする可能性があります。
ユーザーのインターネット利用が増え、SNSなどの普及によって個人が広範囲に情報発信できるようにもなっている昨今、DE&Iの意識の高まりとともに、ユーザーの個性を否定したり誰かを差別したりする意識がなかったとしても、非難を受けるリスクも高まっています。
人は、一人ひとりが異なる多様な特性や価値観を持った存在です。マーケティングに携わるすべての人がこのことを理解し、アンコンシャス・バイアスが含まれているかもしれない、とそれぞれが意識し宣伝活動に取り組むことは、多様性を尊重して制作された広告があふれ、誰もが居心地のよい社会をつくる第一歩になるのではないでしょうか。
LINEヤフーはマーケティング事業において、広告主・広告会社・広告配信パートナー、そしてLINE、Yahoo! JAPANをご利用いただいているユーザーの皆様の誰もが安心して利用できる広告プラットフォームを目指しています。
広告主・広告会社の皆様が、マーケティング活動において自由な表現と多様性を尊重できるよう、アンコンシャス・バイアスを自覚するきっかけづくりになるような情報の発信や、環境の整備など私たちにできることを考えながら皆さまと一緒にDE&Iを推進していきます。
調査概要
調査対象: 以下のすべての条件に合致する人
18歳~69歳 / インターネット広告の接触頻度が、週1回以上 / インターネット広告に含まれるアンコンシャス・バイアスへの接触経験がある
調査地域:全国
調査方法:クロス・マーケティングモニターへのインターネット定量調査
調査時期:2023年8月18日(金)〜2023年8月22日(火)
有効回答数:【本調査】3,000サンプル
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング
参考
・谷口真美. ダイバシティ・マネジメント 多様性をいかす組織. 白桃書房. 2023
・西村直哉. 成果・イノベーションを創出する ダイバーシティマネジメント大全. クロスメディアパブリッシング. 2020・アンコンシャスバイアス研究所(https://www.unconsciousbias-lab.org/unconscious-bias)
・日本労働組合総連合会(https://www.jtuc-rengo.or.jp/action/diversity/)
・内閣府男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/pdf/202105.pdf)
・朝日新聞デジタル(https://www.asahi.com/sdgs/article/14770111)
・福岡県人づくり・県民生活部 女性活躍推進課(https://joseikatsuyakuoentai.pref.fukuoka.jp/unconscious_bias/about/)
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