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薬機法とは?その規制内容と、押さえておきたいNG表現
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)の理解は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器及び再生医療等製品の4分野の商品を扱う企業の広告運用者に欠かせません。広告違反とみなされれば、事業に影響が出るほか、措置命令や課徴金などのペナルティーを受けます。
そこで本記事では、薬機法を基礎から解説し、薬機法の広告規制対象、広告違反になる事例、違反時の罰則などについて解説します。
なお、今回の記事はあくまでも一般論としての薬機法を解説します。薬機法に基づいた、Yahoo!広告の広告掲載基準における規制内容や審査などについては、以下をご覧ください。
>薬機法ポータルを見る
目次
1. 薬機法とは
ここでは、薬機法(旧薬事法)の概要を解説します。
1.1. 薬機法の定義
薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器及び再生医療等製品の4分野の商品の品質・有効性・安全性を確保するための法律です。
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機等法)」で、2014年11月25日の法改正によって「薬事法」から「薬機法」に名称変更されました。
1.2. 薬機法が定められている目的
薬機法を定めた目的は、薬機法 第一章 総則 第一条で説明されています。以下、内容を引用します。
(目的)
第一条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
引用:第一章 総則 第一条(外部サイト)
重要ポイントをまとめると、次の3点を目的としています。
● 保健衛生上の危害の発生・拡大の防止
● 指定薬物の規制
● 保健衛生の向上
これらの目的実現のために、薬機法では開発・承認・製造・流通・使用の各プロセスで規制が設けられています。広告運用では、次項から解説する「流通プロセス」での広告規制の理解が必要です。
薬機法について、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
>「【動画でみる】薬機法の広告規制について」を見る
2. 薬機法で定められている3つの規制
薬機法には以下の3つの規制が設けられています。
●薬機法(旧薬事医薬品等の製造・販売規制)
●医薬品等の広告規制
● 医薬品等の取扱規制
それぞれの規制について概要を解説します。
2.1. 薬機法(旧薬事医薬品等の製造・販売規制)
薬機法は、医薬品の製造や販売などの事業に関する規制です。
薬機法では、医薬品や医療機器に関連する事業を行う場合には、厚生労働大臣や都道府県知事の許可・登録を受けなければなりません。
医薬品や医療機器に関連する事業とは、以下のような事業を指します。
●薬局の開設
●医薬品、医薬部外品、化粧品の製造販売
●医療機器、体外診断用医薬品の製造販売
●再生医療等製品の製造販売
●高度管理医療機器等の販売および貸与
●医療機器の修理
2.2. 医薬品等の広告規制
医薬品の広告規制は、医薬品に関する情報の発信を規制する内容です。
広告代理店やライター、アフィリエイターなど、医薬品に関する情報発信を行う人すべてを対象に、一般消費者の誤導を防ぐため規制が設けられます。
具体的には、以下の内容が禁止されていますのでご注意ください。
● 事実と異なる内容や誇張された内容の発信
● がんや白血病など特定の病気の治療に用いられる医薬品に関する一般向けの発信
● 未承認品に関する発信
2.3. 医薬品等の取扱規制
医薬品等の取扱規制は、医薬品などを扱う事業者を対象にした取り扱い方法に関する規制です。商品の種類に応じて、以下の内容を遵守しなければなりません。
●処方箋を持たない者に対し、原則として処方箋医薬品を販売してはならない
● 医薬品の直接の容器や被包に、必要事項を見やすく記載しなければならない
● 虚偽または誤解を招く恐れのある記載をおこなってはならない
● 薬機法の規制に違反する医薬品の販売をおこなってはならない
以上が薬機法で定められている3つの規制です。なお、本記事では以降、3つの規制のうち広告規制について詳しく解説していきます。
3. 薬機法の広告規制内容
薬機法の広告規制は、次の3つに分類して定められています。
●虚偽または誇大な記事・広告の禁止(第66条)
●特定疾病用医薬品・再生医療等製品の広告の制限(第67条)
●承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告の禁止(第68条)
それぞれについて、詳しく解説します。
なお、薬機法の規制対象に指定されている医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器及び再生医療等製品について、これ以降「医薬品など」と記述します。
3.1. 虚偽または誇大な記事・広告の禁止
薬機法第66条では、医薬品などの名称、製造方法、効能・効果、性能について、虚偽または誇大な記事・広告を流布することを禁じています。
(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
引用:第十章 医薬品等の広告(誇大広告等)第六十六条(外部サイト)
第66条違反になるポイントをまとめると、次の3点です。
●虚偽・誇大なもの
●医師が保証したと誤解されるおそれがあるもの
●堕胎暗示、わいせつ文書・図画があるもの
注意が必要なのは、冒頭に「何人も」と書かれている点です。つまり、医薬品などのメーカー、広告媒体企業、ライター、アフィリエイター、インフルエンサーなど誰もが規制対象者です。
3.2. 特定疾病用医薬品・再生医療等製品の広告の制限
薬機法第67条では、特定疾病用医薬品・再生医療等製品の広告が制限されています。
(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第六十七条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
第67条により、例えば、がんや白血病に用いられる高度な専門知識を必要とする医薬品の広告を一般人に向けて発信できません。
3.3. 承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告の禁止
薬機法第68条では、承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告が禁止されています。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬機法第68条で注意しなければならないのは、健康食品の扱いです。薬機法では健康食品という定義はありません。私たちが口から摂取するもののうち、医薬品、医薬部外品以外のものはすべて食品に該当し、その中に健康食品と呼ばれているものがあります。健康食品は医薬品としての承認を受けていないため「承認前の医薬品」に該当します。したがって、医薬品のような効能、効果を表示すると薬機法第68条違反するおそれがあります。
4. 商材別の薬機法の広告規制対象の例
ここでは、広告規制対象の具体的な品目と、薬機法違反になる可能性がある表現例を解説します。薬機法違反になる可能性がある表現例や理由はすべて「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」から引用しております。 対象品目についての厳密な定義は、引用元を確認してください。また、薬機法違反の表現例はごく一部に過ぎません。
4.1. 医薬品
医薬品に分類される品目は、以下のようなものです。
品目 | 説明 |
---|---|
医療用医薬品 | 医師の処方箋にもとづいて薬剤師が調剤した医薬品(処方薬) |
第1類~第3類の一般医薬品 要指導医薬品 | 医師の処方箋なしに購入できるかぜ薬や胃薬など |
体外診断用医薬品 | 血液学的検査薬など |
薬機法違反になる可能性がある表現例 | 理由 |
---|---|
安全性は確認済み 副作用の心配がない 使用法を問わず安全など | (1)効能効果等又は安全性の保証表現について 例えば胃腸薬の広告で胃弱、胃酸過多等の適応症をあげ、それが「根治」、 「全快する」等又は「安全性は確認済み」、「副作用の心配はない」等の表 現を用い、疾病の要因、患者の性別、年齢等の如何を問わず効能効果が確 実であること又は安全であることを保証するような表現は認められない。 なお、効能効果等又は安全性を保証する表現については、明示的、暗示 的を問わず認められない。 |
小児専門薬、婦人専門薬 | (2)「○○専門薬」等の表現について 特定の年齢層、性別などを対象にしたもの、例えば「小児専門薬」、「婦 人専門薬」などの表現は、本基準第4の3(1)「承認等を要する医薬品 等についての効能効果等の表現の範囲」に抵触するおそれがあり、かつ、 医薬品広告の表現としては好ましくないため、承認を受けた名称である場 合以外は使用しないこと。 ただし、「○○専門薬」の表現ではなく、「小児用」、「婦人用」等の表現 については、承認上の効能効果等又は用法用量から判断して特定の年齢層、 性別等が対象であると推定できる医薬品等の場合は差し支えない。 なお、「小児用」等と表現できる事例は、小児の用法からなる「かぜ薬」 などである。 |
生薬配合 | (2)一般用医薬品における「生薬配合」又は「生薬製剤」の表現について ①「生薬配合」の表現については、有効成分の一部に生薬が配合されており、しかも承認された効能効果等と関連がある場合に限り使用して差し支えない。 ②「生薬製剤」の表現については、有効成分の全てが生薬のみから構成されている場合に限り使用して差し支えない。 |
漢方処方 | (1)一般用医薬品における「漢方処方」等の表現について 一般用医薬品で、「漢方処方」、「漢方製剤」等と表現できる範囲は、一般用漢方製剤承認基準に定められているもの、医療用医薬品の漢方製剤と同一処方であるもの及び承認を受けた販売名に漢方の名称が付されているものとする。 なお、製剤自体が漢方製剤でないものについて、例えば『漢方処方の「○○○エキス」に西洋薬を配合』のようにその処方の一部が漢方処方である旨を示すことは、当該配合剤が漢方製剤である又は漢方製剤よりも優秀であるかの印象を与え、安全性等について誤解を招くこととなるため認められない。 |
4.2. 医薬部外品
医薬部外品とは、効果が認められているものの人体への影響が緩和され、医薬品と化粧品の中間にあるものです。具体的には、うがい薬、薬用シャンプー、染毛剤、栄養ドリンクなどが挙げられます。
参照:(定義) 第二条 2(外部サイト)
薬機法違反になる可能性がある表現例は、以下のとおりです。
薬機法違反になる可能性がある表現例 | 理由 |
---|---|
△△(商品名)は○○年の歴史を持っているから良く効くのです。 | (2)歴史的な表現について 特定の医薬品に関係なく、その企業の歴史の事実として単に「創業○○年」等と広告することは差し支えない。 また、「△△(商品名)販売○○周年」など単に当該医薬品等が製造販売された期間の事実のみを表現し、効能効果等又は安全性を保証するような表現がなされていなければ差し支えない。 ただし、「△△(商品名)は○○年の歴史を持っているから良く効くのです。」等その企業又は医薬品等の歴史に関連させ、安全性、優秀性の保証となる表現又は他社に対する優越性の保証となる表現をすることは、本項だけでなく本基準第4の3(1)「承認等を要する医薬品等についての効能効果等の表現の範囲」又は本基準第4の3(2)「承認等を要しない医薬品等についての効能効果等の表現の範囲」に抵触するおそれがあるため注意すること。 |
最高のききめ | (1)最大級の表現について 「最高のききめ」、「無類のききめ」、「肝臓薬の王様」、「胃腸薬のエース」、「世界一を誇る○○KKの○○」、「売上げNo.1(注)」等の表現は認められない。(注)新指定医薬部外品以外の医薬部外品及び化粧品を除く。 |
「疲労感に」 | (1)医薬部外品の効能効果について 「○○を防ぐ」という効能効果で承認を受けているものにあっては、単に「○○に」等の表現は認められない。ただし、承認された効能効果が明瞭に別記されていればこの限りでない。 |
4.3. 化粧品
化粧品とは身体を清潔に保つためや身だしなみを整えるために身体に塗布・散布する外用品です。具体的には、シャンプーや口紅、ファンデーション、香水などがあります。
参照:(定義) 第二条 3(外部サイト)
薬機法違反になる可能性がある表現例は、以下のとおりです。
薬機法違反になる可能性がある表現例 | 理由 |
---|---|
「シミが消えた」などの口コミ | (5)使用体験談等について 愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以下の場合を除き行ってはならない。 なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。 ①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合 ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。 ②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合 |
使用前、使用後の写真・図表 | (4)図面、写真等について 使用前、後に関わらず図面、写真等による表現については、承認等外の効能効果等を想起させるもの、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められない。 |
高貴薬配合 デラックス処方など | (1)成分等について 医薬品等の成分及びその分量又は本質等並びに医療機器の原材料、形状、構造及び原理について、例えば医薬品の場合にはその有効成分が男性ホルモンであるものを両性ホルモンであるとする、単味であるものを総合、複合等とする、又は「高貴薬配合」、「デラックス処方」等とするような表現は認められない。 |
各種~、数種~ (数種のビタミン配合など) | (3)配合成分の表現について ①「各種・・・」、「数種・・・」等の表現について配合成分の表現の仕方で「各種ビタミンを配合した・・・」、「数種のアミノ酸配合・・・」のように「各種・・・」、「数種・・・」という表現は不正確で、かつ誤認させ易いので、配合されている成分名は具体的に全部が列挙されている場合の他は使用しないこと。 |
新発売 | (2)新発売等の表現について 「新発売」、「新しい」等の表現は、製品発売後12カ月間を目安に使用できる。 |
4.4. 医療機器
医療機器とは病気の治療に用いられる機器です。超音波画像診断装置やペースメーカー、人工関節、メス(クラスⅠ~Ⅳ)などさまざまな物が含まれます。
参照:(定義) 第二条 4(外部サイト)
薬機法違反になる可能性がある表現例は、以下のとおりです。
薬機法違反になる可能性がある表現例 | 理由 |
---|---|
特許製品 | 2 製造方法関係 (2)特許について 特許に関する虚偽又は誇大な広告を行った場合は本項に抵触する。なお、特許が事実である場合は、本基準第4の10「医薬関係者等の推せん」により取扱う。10 医薬関係者等の推せん (3)特許について 特許に関する表現は、事実であっても本項に抵触し、事実でない場合は虚偽広告として取扱う。なお、特許に関する権利の侵害防止等特殊の目的で行う広告は、医薬品の広告と明確に分離して行うこと。(特許に関しては表示との取扱いの相違に注意:「特許の表示について」(昭和39年10月30日薬監第309号厚生省薬務局監視課長通知)) |
〇〇大学医学部教授推薦 | 10 医薬関係者等の推せん 医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。 |
安心してお使いください | (1)安全性の表現について 家庭用電気治療器等に「安全です、安心してお使いください。」、「安全性が高い」等と漠然と記載したものは、本項に抵触するため注意すること。 |
4.5. 再生医療等製品
再生医療等製品とは、身体の一部を再建・修復・形成する製品や、病気の治療・予防を目的に使用される製品です。具体的には、心筋の細胞シートなどの細胞加工製品や、遺伝子治療用製品などがあります。
参照:(定義) 第二条 9(外部サイト)
薬機法違反になる可能性がある表現例は、以下のとおりです。
薬機法違反になる可能性がある表現例 | 理由 |
---|---|
臨床データで証明済 | (3)臨床データ等の例示について 一般向けの広告にあっては、臨床データや実験例等を例示することは消費者に対して説明不足となり、かえって効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため原則として行わないこと。 |
厚生労働省が認可した | (5)厚生労働省認可(許可・承認等)等の表現について 厚生労働省認可(許可・承認等)、経済産業省認可(許可)等の表現も本項に抵触する。 |
5. 押さえておきたい薬機法のNGワードとは
本章では、医薬品などに関連する発信を行う方に向けて押さえておきたいNGワードを解説します。
薬機法の主なNGワードに加え、健康食品・サプリメント関連のNGワード、化粧品関連のNGワードもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
5.1. 薬機法の主なNGワード
薬機法において、多くのカテゴリーに該当する主なNGワードには以下の4つがあります。
5.1.1. 安心・安全
安心・安全を謳う表現は、医学薬学上で認められた範囲から逸脱しているため、また消費者の誤解を招くため使用できません。
違反になる可能性がある表現例は、以下のとおりです。
● (成分名)なのでお肌が敏感な方でも安心です
● (商品名)は安全性が証明されています
5.1.2. 治る・治癒
病気や怪我を治癒する旨の表現は禁止されており、使用した場合は行政指導や禁固刑など厳しい処分が課される可能性があります。
違反になる表現例は、以下のとおりです。
●(症状)が治る
●(病名)を治癒する
5.1.3. 効果・効果的
同じ商品であっても、効果効能は人によって変わる可能性があります。このため、「効果がある」や「効果的」などの表現も薬機上でNGとされています。
違反になる表現例は、以下のとおりです。
● (症状)に効果があります
● (病名)の予防に効果的です
5.1.4. 改善
ラインが曖昧なものの、使用を避けたほうが良いといわれているNGワードが「改善」です。効果と同様、人によって症状の改善ができるかどうかが異なるためです。誤解を招く表現や誇大広告と見なされる恐れがあります。
違反になる表現例は、以下のとおりです。
● (症状)を改善できます
例外として、厚生労働省に認可されている有効成分が含まれる商品は「改善」のワードを使用することができます。
5.2. 健康食品・サプリメント関連のNGワード
続いて、健康食品・サプリメント関連のNGワードを具体例を用いて紹介します。
健康食品やサプリメントは薬機法の直接の規制対象には含まれないものの、医薬品と誤認させる表現があると薬機法違反と見なされます。
違反になる表現例は、以下のとおりです。
ダイエット系商品 | 飲むだけで痩せる 細くなる ⚪︎kg落ちる 脂肪燃焼 新陳代謝が向上する |
美容系商品 | 美肌 美白 アンチエイジング 抗酸化 しみ・しわ予防 老化防止 |
腸内環境系商品 | 腸内環境 腸活 便秘 善玉菌増加 悪玉菌増加 |
分野を問わず、体の変化や悩み・症状の改善を思わせる表現はNGです。
適切な言い換えをするか、「⚪︎⚪︎をサポートする」という効果を断定しない表現、「元気になる」「キレイになる」などの抽象的な表現を用いるようにしましょう。
5.3. 化粧品関連のNGワード
最後に、化粧品関連のNGワードを具体例を用いて紹介します。
化粧品は薬機法の直接の規制対象に含まれます。表現できるワードは「化粧品の効能の範囲の改正について」に記載されている56項目の他、メーキャップ効果や使用感などに限られており、それ以外の表現は違反と見なされます。
参照:化粧品の効能の範囲の改正について(外部サイト)
違反になる表現例は、以下のとおりです。
効果効能 | 美白 アンチエイジング 抗酸化 ニキビが治る しわ改善 | |
成分表現 | 成分表現 100%無添加 ⚪︎⚪︎効果のある(成分名)を配合 ※1 (成分名)配合 ※2 |
※1 化粧品に認められた効能効果の範囲を逸脱している場合 |
浸透表現 | 浸透表現 肌の奥深くへ 肌の内側から美しく ほうれい線をケア ※ キューティクルが回復 |
※しわ改善を暗示する表現はNG |
このように、化粧品は健康食品やサプリメントと同様、医薬品と誤解される効果効能の表現はNGとされます。ただし、商品によっては化粧品ではなく「医薬品」や「医薬部外品」として承認を受けており、上記の表現を使用できる場合があります。商材に合わせた表現を考えることが大切です。
6. 薬機法に違反した広告を配信したときの罰則制度
薬機法違反に抵触した広告を配信した場合の罰則には刑事罰、行政処分、課徴金の3つがあります。
6.1. 刑事罰
悪質な薬機法違反だと見なされた場合、刑事罰として懲役または罰金、あるいはその両方が課されます。
例えば虚偽・誇大広告の配信であれば、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、特定疾病用の医薬品等に関する広告の配信であれば1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が課される可能性があります。
第八十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
四 第六十六条第一項又は第三項の規定に違反した者
引用:第八十五条 四(外部サイト)
(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
引用:(誇大広告等) 第六十六条(外部サイト)
第八十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
十七 第六十七条の規定に基づく厚生労働省令の定める制限その他の措置に違反した者
引用:第八十六条 十七(外部サイト)
(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第六十七条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
引用:(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限) 第六十七条(外部サイト)
6.2. 行政処分
広告違反における行政処分の内容には以下のようなものがあります。
●業務改善命令
●業務停止命令
●措置命令
●許可・登録の取り消し
●薬機法違反に関する報告書提出
例えば措置命令の場合、厚生労働大臣または都道府県知事から、違反行為の中止・排除、再発防止策の実施などが言い渡されます。
(違反広告に係る措置命令等)
第七十二条の五 厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者に対して、その行為の中止、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一 当該違反行為をした者
二 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四 当該違反行為をした者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた者
2 厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反する広告(次条において「特定違法広告」という。)である特定電気通信(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)第二条第一号に規定する特定電気通信をいう。以下同じ。)による情報の送信があるときは、特定電気通信役務提供者(同法第二条第三号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。以下同じ。)に対して、当該送信を防止する措置を講ずることを要請することができる。
引用:(違反広告に係る措置命令等)第七十二条の五(外部サイト)
なお、2021年8月1日から改正法が施行されたため、薬機法66条「虚偽または誇大な記事・広告の禁止」も措置命令の対象になりました。自社広告を再チェックしていない場合は、早急に実施しましょう。
6.3. 課徴金の納付
薬機法66条「虚偽または誇大な記事・広告の禁止」に違反すると、課徴金の納付を命じられます。この罰則は違反行為の予防効果を強化する目的で2019年12月4日に改正され、2021年8月1日から施行されました。
(課徴金納付命令)
第七十五条の五の二 第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
2 前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日(同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。
3 第一項の規定にかかわらず、厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、課徴金対象行為者に対して同項の課徴金を納付することを命じないことができる。
一 第七十二条の四第一項又は第七十二条の五第一項の命令をする場合(保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限る。)
二 第七十五条第一項又は第七十五条の二第一項の処分をする場合
4 第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない。
引用:(課徴金納付命令)第七十五条の五の二(外部サイト)
重要なポイントは、以下のとおりです。
●課徴金額は最大3年間に遡って対象商品の売上の4.5%
●課徴金額が225万円未満(売上5,000万円未満)の場合は、課徴金納付の対象外
●措置命令、業務停止命令、業許可の取消しなどの行政措置を受けた場合、課徴金が課されないことがある
●減額措置がある(課徴金を命じられる前に自主申告すると課徴金が半額になるなど)
7. 薬機法違反を犯さないためのポイント
薬機法違反を犯さないためには、次の4点が重要です。
7.1. 厚生労働省のガイドラインを熟読する
厚生労働省医薬・生活衛生局が公表している適正広告の基準と留意事項を確認しておきましょう。下記リンクからガイドラインにアクセスできます。医薬品や化粧品などの広告規制対象ごとに、具体的な基準が書かれているので、参考にしてください。
ガイドラインの概要を理解したら、どの自社商品が規制対象になっているのか、自社の広告や記事に不備がないかなどの観点で確認しましょう。特に広告表現の基準はあいまいな部分もあるため、適切な訴求方法を検討することが大切です。
参考:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(PDF)
7.2. 不明点は専門家に相談する
薬機法について不明なまま放置すると、想定外の理由で摘発を受けるリスクがあります。必要に応じて、弁護士などの専門家の力を借りましょう。
薬機法違反で措置命令や課徴金の納付命令を受けると、広告媒体の審査に通過できなくなる可能性もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、専門家のチェックを受けましょう。顧問弁護士がいない場合は信頼できる弁護士を見つけておくと、必要なときに迅速に相談に乗ってもらえます。
7.3. 社内で広告ガイドラインを作成する
薬機法に違反しないためには、社内で広告制作のガイドラインを作成しましょう。広告配信に関わる自社スタッフ全員がガイドラインを正しく理解することで、安全に広告運用できます。
また、広告代理店やWeb制作会社の担当者ともガイドラインを共有しておくと、より確実に薬機法を遵守できます。
薬機法について、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
>「【動画でみる】薬機法の広告規制について」を確認する
7.4. ツールで薬機法違反の表現がないかチェックする
Webサイト上には、薬機法違反の表現の有無をチェックできるツールが多数存在しています。
例えば、薬事法 広告表現チェックツールは30文字以内の文書を入力するだけで、化粧品・薬用化粧品・健康食品での使用を検討している表現が薬事法に抵触していないか、無料で簡単に確認することができます。
より詳細な確認が必要な場合には、機能が充実している有料ツールの使用がおすすめです。
8. まとめ
薬機法の理解は、医薬品や化粧品などを扱う企業にとって必須です。広告運用では、虚偽・誇大広告、特定疾病用医薬品・再生医療等製品の広告、承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告の制限に違反しないように注意が必要です。
違反すると措置命令や課徴金のペナルティーがあります。罰則を受けると広告媒体の審査に通らなくなるなどの恐れもあるため、専門家の助言を受けたり、社内ガイドラインを設けたりするなどしてトラブルを未然に防ぎましょう。
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