ダイレクトマーケティングとは? 手法や活用メリット・注意点を解説
近年ますます注目されている「ダイレクトマーケティング」。一見すると導入が難しく思うかもしれませんが、選ぶ手法によっては低コストでスモールスタートでき、業種や規模を問わず収益を安定できます。
本記事ではダイレクトマーケティングの定義や特徴、取り組むメリット、具体的な手法、活用のポイントなどを解説します。ダイレクトマーケティングを導入する際の参考にしてください。
ダイレクトマーケティングとは?わかりやすくいうと?
そもそもダイレクトマーケティングとは、どのようなマーケティング手法なのでしょうか。定義や特徴、マスマーケティングとの違いを解説します。
ダイレクトマーケティングの定義
ダイレクトマーケティングとは、企業が一人ひとりの顧客と直接コミュニケーションをとりながら購入を促すマーケティング手法です。従来のマスマーケティングと比べると、このような特徴があります。
アメリカの業界団体、データ&マーケティング協会(旧ダイレクトマーケティング協会)による定義は以下のとおりです。
「一つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどのような場所でも達成することのできる双方向のマーケティングである」
ダイレクトレスポンスマーケティングとは
ダイレクトレスポンスマーケティングはダイレクトマーケティングの一種で、広告や宣伝など企業側からの接触に対してレスポンスがあったユーザーへアプローチする手法です。広告に対して自発的にアクションを起こしたユーザーは商品やサービスに関心を持っている可能性が高く、購入につながりやすいのが特徴です。購入見込みの高いユーザーにターゲットを絞ることで、効率よく成果につなげられます。
ダイレクトコンテンツマーケティングとは
ダイレクトコンテンツマーケティングは、ユーザーにとって魅力的なコンテンツを発信してアプローチする手法です。一般的な広告とは異なり、「企業がアピールしたいこと」ではなく「顧客が知りたいこと」を発信するのが特徴で、ユーザーの関心を引き、信頼関係を構築します。コンテンツの内容に興味を持ったユーザーは顧客となる可能性が高く、ターゲットを絞らず広く発信する広告よりも高い成約率が見込めます。
マスマーケティングとの違い
ダイレクトマーケティングとマスマーケティングには、以下のような違いがあります。
ダイレクトマーケティング | マスマーケティング | |
---|---|---|
対象 | 特定のユーザー 既存顧客メイン |
不特定多数 潜在層メイン |
アプローチ(企業対顧客) | 1対1 | 1対多 |
コミュニケーション | 双方向、個別化したメッセージの配信 | 一方向 |
効果測定 | 直接的 | 間接的 |
ただし、双方は対立する手法でなく、テクノロジーの進化によりマスマーケティングを個別化できるようになったという考え方もあります。
ダイレクトマーケティングの特徴
ダイレクトマーケティングの主な特徴は3つです。
- 顧客と直接的な関係を築ける
- 顧客データを収集できる
- 相手に合わせた広告媒体を選べる
顧客と直接的な関係を築ける
顧客の属性や販売履歴などのデータをもとに、相手に合わせたマーケティングをおこないます。「どのような悩みや課題を持っているのか」「好みや関心はどこにあるのか」などを探りながらアプローチします。
この結果、顧客から強い信頼関係を得やすくなります。特に電話やSNSなどのようにリアルタイムの双方向コミュニケーションを実現できる手法では、一気に距離を縮められる効果も期待できます。
顧客データを収集できる
電子メールの開封率やクーポン券の利用率など、施策に対する顧客の反応をデータとして収集できます。これらの顧客データはダイレクトマーケティングの改善に活用でき、さらに商品開発やカスタマーサポートなど他の施策にも応用できます。
相手に合わせた広告媒体を選べる
ダイレクトマーケティングには、テレマーケティングやWeb広告など複数の手法があります。顧客層やコスト面、顧客管理システムとの連携など、自社に合った方法を選べるでしょう。また、これらを組み合わせることも可能です。
ダイレクトマーケティングの手法6つ
ここでは主要なダイレクトマーケティング手法を6つ紹介します。
テレマーケティング
電話を用いた手法です。顧客から企業に連絡する場合はインバウンドコールと呼ばれており、通販業界や卸業などで主流の方法です。既存顧客への連絡はアウトバンドコールと呼ばれ、BtoBなどで用いられています。
メリット | ・生の声を聞き取りやすい、距離感を縮めやすい ・売り上げにつなげやすい |
---|---|
デメリット | ・警戒感を持たれやすい、顧客の迷惑になるリスクが高い ・スタッフ育成に時間がかかる |
適した顧客層 | ・既存顧客、優良顧客 ・ITリテラシーが低い層 |
ダイレクトメール(DM)
チラシやカタログなどを顧客の自宅、職場に郵送する手法です。手に取って読め、手元に残ることからレスポンス率が高い傾向があります。ややコストはかかりますが、ダイレクトマーケティングの主流といえます。
メリット | ・レスポンス率が高い ・商品サンプルを同封できる |
---|---|
デメリット | ・郵送費、印刷費がかかる |
適した顧客層 | ・シニア層や主婦層など在宅時間が長い顧客 |
ダイレクトメール(DM)について、こちらのページでも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
Eメールマーケティング
EメールマーケティングはEメールを用いた手法で、さらに種類が分けられます。
- 特定の顧客層を選んで配信する「セグメントメール」
- 登録読者に有益な情報を定期的に配信する「メールマガジン」
- 読者のフェーズに応じて継続的にメールを送る「ステップメール」
などが代表的な種類です。顧客管理システムと連携すると、送信リスト抽出や本文の変更などが自動的におこなえます。
メリット | ・郵送費、広告費がかからないため低コスト ・集客、販促、フォローなど、さまざまな目的に使える |
---|---|
デメリット | ・迷惑メールと思われるリスクが高い ・DMよりは開封率が低い |
適した顧客層 | ・Eメールが主流のBtoB顧客 ・Eメールアドレスを得やすいECサイトの顧客 など |
SNSマーケティング
SNSの双方向コミュニケーションを活用してアプローチする手法です。特に利用率が高い若年層に対して向いています。ただし、SNSによって機能やユーザー層が異なるため、自社に合った媒体を見極める必要があります。
メリット | ・メッセージのやり取りで信頼関係を築きやすい ・情報シェア、拡散効果を期待できる |
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デメリット | ・炎上リスクがある ・直接的な売り上げにつなげにくい |
適した顧客層 | ・SNS利用率が高い若年層 |
Web(インターネット)広告
Web広告は、顧客の年齢、性別、住んでいる地域、検索キーワードなどによって、細かなターゲティング設定が可能です。したがって、顧客情報がなくてもダイレクトマーケティングを実現できます。
メリット | ・マス広告に比べて低コスト ・ターゲットを選んで広告表示できる ・成果測定しやすい(クリック率、コンバージョン率など) |
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デメリット | ・自社運用のための基礎知識が必要(広告出稿、アクセス解析など) |
適した顧客層 | ・一部のシニア層、子どもを除く一般消費者全般 |
Web広告について、こちらのページでも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
レコメンデーション
ECサイトやアプリなどで購買履歴、行動履歴などをもとに、興味を持ちそうな商品を勧める手法です。「あなたにおすすめ」「関連商品はこちら」のように商品表示するなどして、購買率や購買単価、回遊率の向上を図れます。
メリット | ・売り上げ向上を図れる ・精度が高ければ顧客から信頼感を得られる |
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デメリット | ・精度が悪いと顧客に迷惑がられるリスクがある |
適した顧客層 | ・既存顧客や会員 |
ダイレクトマーケティングを活用するメリット
ここでは導入のしやすさやコスト面など、ダイレクトマーケティングのメリットを6つ紹介します。
少人数でもはじめられる
ダイレクトマーケティングはメールやWeb広告、DMなどが人に代わって営業してくれるため、わざわざ人手を増やす必要がありません。そのため、運用体制さえ整えば少人数でもはじめられます。
テレマーケティングのように人手が必要な手法では、アウトソーシングも検討できます。
ニーズを把握できる
ダイレクトマーケティングではユーザーとコミュニケーションをとり、リアルなニーズを把握できます。また、施策の結果を必ず計測するため、継続するほど「どのようなアプローチが有効だったのか」「どの商品を購入したのか」などの顧客データが蓄積できます。
これらの顧客データはダイレクトマーケティングの精度向上だけでなく、新サービスのヒントを得たり、アップセルやクロスセルの施策を立案したりするときにも役立ちます。
少ない予算でもできる
ダイレクトマーケティングには、Web広告やEメールマーケティングなど、スモールスタートできる手法が多くあります。
例えばWeb広告では、クリック数に応じて料金を支払ったり、広告費上限を決めて広告を出稿したりできます。少なめの予算でも自社に合ったアプローチ方法を選べるでしょう。マス広告のような高額費用をかけなくてもよいため、低リスクでもあります。
高い費用対効果が期待できる
ダイレクトマーケティングは見込み度の高い顧客に絞り込み、さらに顧客の属性やニーズにマッチしたアプローチ方法をとります。そのため、費用対効果が高くなりやすいのがメリットです。
特に顧客データが豊富な既存顧客や優良顧客には、顧客に寄り添ったピンポイントの施策を打てます。顧客データが蓄積されるほど、高い費用対効果を見込めるでしょう。
PDCAを回しやすい
ダイレクトマーケティングは、成果測定がしやすくPDCAを回しやすいメリットもあります。例えば、Eメールの開封率やクーポン券の使用率などの収集データをみれば、施策が有効だったか客観的に測定できます。
特にWeb広告やSNSでは、自動的にクリック率やコンバージョン率が集計されるため、成果測定と改善策の立案が容易です。
安定的な収益化を目指せる
先に述べたように、ダイレクトマーケティングを続けていくと顧客データが蓄積されていきます。そのため、「顧客の購入サイクルに合わせてDMを郵送する」「興味関心に合ったアップグレード製品を紹介する」などの施策が可能です。
こうした既存顧客のフォローは、収益を安定させるのにも重要です。定期購入につながれば、たとえ購買単価が少なくても長期的にみれば大きな利益となるため、経営の安定化に重要なLTV(顧客生涯価値)を向上できます。
LTVについて、こちらのページでも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
ダイレクトマーケティングのデメリット
ダイレクトマーケティングはメリットの多い手法ですが、一部デメリットもあるため把握しておきましょう。ここでは、ダイレクトマーケティングのデメリットを2つ紹介します。
効果が出るまでに時間とコストがかかる
ダイレクトマーケティングには、顧客データベースであるCRMやメール配信ソフト、DMの制作など、採用する手法に応じてコストがかかります。また、一人ひとりに合わせたアプローチをおこなう必要があるため、全員に同じ広告を配信するマスマーケティングと比較して、収益化まである程度の期間が必要です。ダイレクトマーケティングは高い成約率が見込める一方で、すぐに成果が得られるわけではない点に注意してください。
顧客にとって最適なアプローチ方法が違う
ダイレクトマーケティングは、ターゲットによってアプローチ方法を変えるのが特徴です。広告の見せ方や表現、手法などがターゲットに適さないものを選んでしまうと、期待どおりの成果は得られません。顧客データをしっかり分析したうえで、それぞれのターゲット層に合ったアプローチ方法を選ぶことが大切です。
ダイレクトマーケティングの成功を目指すには?
ダイレクトマーケティングの成功のカギは「顧客データの活用」と「コミュニケーション」です。それぞれについて解説します。
収集した顧客データを活用する
ダイレクトマーケティングの土台となるのは、顧客データの活用です。そのためには自社の顧客管理システムと連携させることが重要です。十分な顧客データがなければ、適切なアプローチを適切なタイミングでおこなえません。
Web広告やSNSの場合は、媒体運営側が持っている顧客データも活用できます。例えば、ダイレクトマーケティングで既存顧客の購買パターンを見つけられたら、類似ターゲティング機能を使って潜在層に適応できます。
ダイレクトマーケティングは1対1のアプローチですが、その結果を他に応用すれば、さらに成果を伸ばせます。
顧客とのコミュニケーションをとる
顧客とのコミュニケーションを重ねていけば「顧客エンゲージメント」が育ちます。これは既存顧客として定着してもらうために重要な要素です。
新規顧客開拓が難しくなるなか、顧客エンゲージメントは重視されるようになりました。ダイレクトマーケティングと顧客エンゲージメント育成は相性がよいため、戦略に組み込むとよいでしょう。長期継続するほど効果を発揮するため、データ管理体制を整えることも重要です。
顧客エンゲージメントについて、こちらのページでも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
ダイレクトマーケティングを活用するときの注意点
ダイレクトマーケティングをおこなうとき、顧客や時代とのズレが発生してしまう場合があることに注意が必要です。また、ダイレクトマーケティングで成果を出すにはある程度時間が必要なことも覚えておきましょう。
ターゲット層に合わせた手法を選ぶ
先に紹介したテレマーケティングやWebマーケティングは、どちらの方が優れているというわけではありません。ターゲット層によって最適な方法は異なります。
ターゲット層との接点を検討する際には、ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成が効果的です。例えば、同じ広告文でも受け取り方は人それぞれなので、具体的な人物像をパターン化しておくことは、ネガティブな反応を減らすためにも欠かせません。
時代に合わせた広告を出す
ダイレクトマーケティングの手法は時代によって変わります。例えば現在は、直接会話をするよりも、EメールやSNSでのアプローチを好む人が増えてきました。
しかし、効果が出たとしても、ずっと同じ方法が通用するとは限りません。顧客の反応をうかがいながら、時代に合わせた手法に変えていきましょう。広告内容やデザイン、手法が時代に合わなくなったり親しみが持てなくなったりした場合も、都度ブラッシュアップします。
利益が出るまでに時間がかかる
ダイレクトマーケティングは利益が出るまで時間がかかります。それは、十分な顧客データを蓄積できるまでの間は、精度の高いアプローチが難しいためです。
顧客データを集めながら、手法の組み合わせを変えてみたり、広告文を微調整したりするなど、試行錯誤を繰り返しながら粘り強く取り組む姿勢が求められます。
ダイレクトマーケティングが向いている業種
ダイレクトマーケティングは業種を問わず活用できる手法ですが、特に向いているのはEC業界です。ECサイトには、顧客の属性や購買履歴などさまざまなデータがすでに揃っています。そのため、パーソナライズされた広告配信や購買履歴をもとにした商品のレコメンドなど、ダイレクトマーケティングをすぐに始められる土台ができています。
ダイレクトマーケティングの考え方でマーケティング強化を図ろう
ダイレクトマーケティングは、既存顧客を確保して安定的に収益を上げられる手法として注目されています。ダイレクトメールやWeb広告などさまざまな手法があることを覚えておきましょう。
なかでもおすすめなのが、低コストでスモールスタートできるWeb広告やSNSです。どちらも成果測定機能が媒体側に用意されているため、効率的にマーケティング戦略を改善していけるでしょう。
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