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オムニチャネルとは? 意味・戦略やメリット、マルチチャネルとの違いを紹介
オムニチャネルは近年注目を集めているマーケティング手法です。しかし、いまひとつ内容がよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、オムニチャネルの意味やクロスチャネルやOMOなどとの違い、オムニチャネルを導入するメリット・デメリット、手順、成功させるポイントを解説しています。
オムニチャネルとは
はじめにオムニチャネルの意味と概要を解説します。オムニチャネルの市場規模についても見ていくので、参考にしてください。
オムニチャネルの意味
オムニチャネルとは、すべての(=オムニ)接点・販路(=チャネル)を活用して、利益を拡大させる販売戦略です。チャネルの種類は、オンライン・オフラインを問いません。チャネルの一例がこちらです。
【オンライン】
- ECサイト
- Web広告
- SNS
- Webメディア
- スマートフォンアプリ
- メールマガジン
- チャットボット
【オフライン】
- 実店舗
- 新聞・雑誌広告
- イベント・セミナー
- カタログ・パンフレット
- カスタマーセンター
オムニチャネルの特徴は、顧客と接触できるチャネルを網羅しようとする点です。わかりやすくいえば、ユーザーを取り囲むようにチャネルを設けて、ユーザーがいずれかのチャネルで接触するようにします。
もう一つの特徴は、顧客情報や在庫情報などを一元管理することで、各チャネルを連携させる点です。例えば、実店舗とECショップで同じショップポイントを使えるようにします。
オムニチャネルの市場規模
野村総合研究所の調査によると、日本のオムニチャネルの市場規模は2020年時点で56.7兆円でした。B2CのEC市場に限ると、20兆円です。
オムニチャネルの市場規模は今後も堅調に増えていくと予想されています。同調査によると2026年度の市場規模予測は80.9兆円、B2CのEC市場では29.4兆円です。背景には、2020年のコロナ禍によって消費行動のオンラインシフトが起こり、オムニチャネル対応の必要性が増したことが挙げられます。
出典:野村総合研究所、2026 年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望?コロナショックでデジタル化が加速?|NRI(外部サイト)※PDFがダウンロードされます
オムニチャネルが注目されている背景・理由
オムニチャネルを取り入れる企業が増えている背景には、ビジネス環境の大きな変化があります。
テクノロジーの進化
オムニチャネルを取り入れる企業が増えたのは、テクノロジーの進化によってオムニチャネルを実現しやすくなったためです。顧客管理システムやマーケティングオートメーション(MA)などのツールが進化して、誰がいつどこで何を購入したのかなどの詳細な情報を一元管理できるようになりました。
また、膨大なデータを解析して消費者行動をパターン化したり、個別化したマーケティングに応用したりできるようになっています。さらにクラウドサービスの普及によって、物理的に距離が離れた各チャネルの在庫データや購買情報なども、リアルタイムで共有できるようになりました。
消費者購買行動の変化
スマートフォンやSNSの普及によって、消費者は複数のチャネルを自由に横断するようになりました。例えばマップ検索して最寄りの店に出向いたり、紙媒体のQRコードから企業サイトにアクセスしたりするなど、手軽にチャネルを切り替えられるようになっています。
また、接触経路も複雑になりました。広告接触後に検索エンジンで情報収集したり、SNSで口コミを調べたり、ショッピングモールで最安値店舗を探したりと、さまざまな行動パターンが考えられます。
しかも、スマートフォンでは商品購入や来店予約などのコンバージョンまで完結するのが特徴です。したがって、ユーザーの購買意欲が高まったときに接点を持てないために、機会損失が生じるリスクが高まっています。このような経緯からも、現在ではオムニチャネル化に取り組む企業が増えています。
オムニチャネルと間違えやすい言葉との違い
オムニチャネルと混同しやすい用語はいくつかあります。チャネルの連携度で違いがあるのが、マルチチャネルとクロスチャネルです。また、マーケティングの目的・施策が異なるのがO2OとOMOです。それぞれ違いについて解説します。
マルチチャネルとの違い
マルチチャネルとは、複数のチャネルを運用して、利益拡大を図る手法です。オムニチャネルとの違いは、各チャネルが連携していない点です。例えば、実店舗とECショップでは、別々に顧客管理されています。また、マーケティング戦略の連携もありません。
クロスチャネルとの違い
クロスチャネルとは、複数のチャネルを連携して運用して、利益の拡大を図る手法です。運用の形でいえばオムニチャネルと変わりません。しかし、クロスチャネルよりもオムニチャネルのほうが、連携が強固です。
クロスチャネルの場合、顧客情報や在庫の管理などが一元化できているだけです。あくまで企業サイドの連携にとどまり、顧客がチャネルを横断的に利用することはありません。
一方、オムニチャネルの場合、一元化した情報を活用してシームレスな顧客体験を実現するのが特徴です。例えば、SNS経由でクーポン券をもらった顧客は、ECサイトと実店舗のどちらでもそれを使えます。チャネル全体を一つのサービスと認識しており、一番利用したいチャネルを自由に利用できる状態です。
O2Oとの違い
O2O(Online to Offline)とは、オンラインからオフラインまたはその逆に、見込み客を誘導するマーケティング手法です。例えば、Web広告を使って実店舗に誘導するのがO2Oの施策です。
O2Oはオムニチャネルと違い、特定のチャネルへの誘導を目的とします。オムニチャネルはチャネル全体の垣根をなくす施策のため、マーケティング目的が異なります。
OMOとの違い
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを融合して顧客体験を向上させるマーケティングです。例えば、飲食店での注文をスマホで出すモバイルオーダー、実店舗に設置された接客用チャットボットなどがあります。
オムニチャネルの場合、「接点を増やす」「チャネルの選択肢を増やして利便性を高める」目的に使われます。オンラインとオフラインのチャネル連携はありますが、両者を融合して顧客体験を向上させるマーケティング戦略はありません。
オムニチャネルのメリット・効果
オムニチャネルを導入すると、企業・顧客の双方に多くのメリットがあります。
顧客満足度の向上が期待できる
オムニチャネルを構築すると、顧客は自分が一番アクセスしやすいチャネルを選ぶことができ、利便性が高まります。結果として顧客満足度の向上が期待できます。
顧客満足度が向上すれば、リピーター化やファン化にもつながります。そのため、囲い込み戦略としてオムニチャネルに取り組む企業もあります。
機会損失を減らせる
チャネル間を横断して買い物ができる利便性を提供することで、機会損失を減らせます。例えば、仕事が忙しくて実店舗に行く暇がない人でも、オンラインストアなら購入してもらいやすいでしょう。
また、適切な在庫管理により顧客を失うリスクを減らすこともできます。例えば実店舗で在庫がない際に、オンラインストアから発送する手段があれば、購入してもらえる可能性が高まります。
顧客データの分析に活用できる
オムニチャネルでは各チャネルを連携させることにより、顧客データを一元化できます。その結果、総合的な分析が可能になります。
例えば、ECサイトの購買履歴だけでは、顧客の生の声はわかりにくいものです。しかし、実店舗やカスタマーセンターでヒアリングした顧客の声も一元的にデータ管理できれば、消費者心理や行動をよりよく理解できるようになります。
顧客との接点が増える
オムニチャネルによって、顧客と複数のチャネルで接触する機会が増えます。例えば、Web広告やSNS、新聞広告など、さまざまな媒体で自社の広告を見てもらえます。接触回数が増えれば、ブランド認知の向上が見込めるでしょう。
特にオンラインのチャネルの場合、自社サイトを訪問したユーザーに対してだけWeb広告を配信するなど、チャネルを連携させやすい特徴があります。チャネルを複数持っていれば、さまざまなアプローチで接点を増やせます。
商品の在庫が残りにくい
オムニチャネルでは在庫管理も一元化します。そのため、実店舗とECショップで在庫を共有できます。例えば実店舗で在庫切れが起きそうな際に、ECショップの余った在庫から補充することも可能です。このため余分な仕入れが減り、在庫リスクを減らせます。
オムニチャネルのデメリット
オムニチャネルにはデメリットもあります。イニシャルコストが大きいことや、売り上げが分散するリスクについても知っておきましょう。
効果が出るまでに時間がかかる
オムニチャネルは販促施策と違って即効性がある施策ではありません。顧客がオムニチャネルの存在を認知し、利用者が増えるまで時間がかかります。
オムニチャネルを導入した際は、まずは顧客認知の施策からはじめなければなりません。例えば、Web広告やホームページなどで自社がオムニチャネルに対応していることを宣伝し、顧客に認知してもらう必要があります。
実店舗とオンラインストアで売り上げが分散する
オムニチャネルにすると、実店舗とオンラインストアで売り上げが分散します。トータルの売り上げが増えればいいですが、店舗とネットで売り上げの食い合い(カニバリゼーション)が起きると、問題が生じるケースが少なくありません。
例えば、実績を伸ばしたい実店舗とオンラインストアで社内対立が起きるかもしれません。また、オンラインストアの利用者が伸びた結果、実店舗がショールーム化してしまう場合もあります。実店舗で商品を見た客が自社のオンラインストアで購入すれば問題ありませんが、競合に流れるケースも多くあります。
イニシャルコストがかかる
オムニチャネル導入でよくある課題として挙げられるのが、コストの問題です。オムニチャネルには顧客管理、在庫管理、売り上げ管理など、情報一元化が必要です。したがって、企業の基幹システムの更新が必要になり、高額のイニシャルコストがかかってしまいます。また、独立したシステムと連携するために新たなシステムを開発したり、外部との通信のためにセキュリティを強化したりで、追加コストがかかる場合があります。
オムニチャネルの導入手順
ここでは、オムニチャネルの計画からシステム導入までを、4つのステップに分けて解説します。
ロードマップを策定する
オムニチャネル戦略は規模が大きく、複雑なプロジェクトのため、全体の戦略をまとめたロードマップが不可欠です。ロードマップとは、目標達成のための道筋を示した文書です。目標達成のために、「誰が・いつ・何を・どのようにおこなうか」を洗い出してまとめます。
ロードマップは計画の大枠を決める文書であるとともに、社内で共通認識を持つために重要な文書でもあります。そのため、プレゼン資料のように図や表を多く使って理解しやすい文書にすることが大切です。
カスタマージャーニーマップを作成する
オムニチャネルを成功させるには、顧客がチャネルを横断した顧客体験ができるかどうかがカギとなります。そのためには、顧客の心理と行動を理解しなければなりません。
顧客の心理や行動を理解するには、カスタマージャーニーマップの作成が有効です。カスタマージャーニーマップとは、ペルソナ(自社の典型的なユーザー)の商品認知から購入までの行動と心理をまとめたマップです。
カスタマージャーニーマップを作成すると、設けるべきチャネルが見えてきます。また、チャネル間をどう連携させればコンバージョンにつなげやすいかも発見しやすくなるでしょう。
カスタマージャーニーマップについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
組織体制の構築
オムニチャネル化を実現するには、組織体制の見直しも必要になります。チャネルを連携させるには、組織横断的な協力が必要になるためです。大きな組織では、全体を統括するチームを新設する場合もあるでしょう。
また、企業の意識改革も必要です。オムニチャネルは部門ごとの囲い込み意識があると、連携がうまくいきません。また、チャネル全体で一貫したマーケティングにするために、目的・ビジョンを浸透させる必要があります。
データ連携とシステムの統合
オムニチャネルを実現するには、すべてのデータを統合し、一元管理するシステムを導入する必要があります。商品情報や在庫情報、顧客情報、購入履歴、ポイント情報など、各チャネルに管理されていたすべてのデータを一元的に管理します。顧客管理システム(CRM)や、マーケティングオートメーション(MA)ツール、在庫管理システムなどの更新を検討することになるでしょう。
オムニチャネル化を成功させるポイント
ここでは、オムニチャネル化を成功させるために重要なポイントを3つ紹介します。
顧客に提供する価値を明確にする
オムニチャネルは主に「接点増加」「顧客の囲い込み」などの企業視点の施策のため、顧客視点が乏しくなりがちです。顧客のニーズや悩みなどもリサーチして施策に反映させるとよいでしょう。
自社にあったシステムを導入する
オムニチャネルのシステムは運用や保守管理も大変です。自社リソースで対応できるか現場の意見も聞きながら検討するとよいでしょう。また、各チャネルが密接に連携するオムニチャネルのシステムは、改修が大変です。必要な機能を備えているか慎重に検討する必要があります。
従業員の教育
オムニチャネルは広範囲の業務に影響します。オム二チャネル導入についての研修、勉強会を実施し、社内全体のリテラシーを高める施策も必要です。
オムニチャネル化が早急に実施できない場合
オムニチャネル化は大規模かつ複雑なプロジェクトのため、短期間で実現できないケースもあるかもしれません。このような場合は、「マルチチャネル→クロスチャネル→オムニチャネル」のように段階的に進めていく方法もあります。
例えば、オフラインのチャネルしかない場合は、オンラインのチャネルを追加すればマルチチャネル化を実現できます。なかでもWeb広告は少額資金からはじめられ、成果測定もしやすいため、追加しやすいチャネルといえるでしょう。
Yahoo!広告はWebサイトやアプリなどの広告枠に表示する「ディスプレイ広告」と、検索エンジンの検索結果にテキスト広告を掲載できる「リスティング広告」を提供しています。
Yahoo!広告については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
オムニチャネル化で顧客獲得とロイヤリティ向上を図ろう
多様化した消費者行動に対応するため、複数のチャネルを連携して利益向上を図るために、オムニチャネルを導入する企業が増えています。オムニチャネルを導入すると、機会損失が減ったり、ロイヤリティを向上させたりするなど、さまざまなメリットが期待できます。ただし、オムニチャネルは費用やIT技術面でハードルが高い施策です。長期プロジェクトとして着実に計画を進めるとよいでしょう。
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