必見! テクノロジーサービス本部長 鍵山仁が語る今後の戦略 ~【前編】
【シリーズ】Yahoo! JAPANが考える、Withコロナ時代のデジタルマーケティングとは?~ 1
2020年5月、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例が発表されました。Withコロナの時代に、デジタルマーケティングができることは何か? Yahoo! JAPANのマーケティング支援のデータソリューションを推進するテクノロジーサービス本部長 鍵山に、考えを聞きました。
Yahoo!マーケティングソリューションにおける、データ事業戦略
「広告におけるデータ事業」について
2014年前後、デジタルマーケティング市場は「枠から人へ」というキーワードで、タグマネジメント、DSP、DMPなどの業者が市場に乱立し、ディスプレイ広告を中心にアドテクブームがものすごく賑わっていました。
その頃に入社した私もまた、そのようなブームに乗っかっていた一人です。Yahoo! JAPANという国内最大級のメディアを持ち、数十万社もいる広告主様に対してサービスを提供しているビジネスの中で、DMPという仕組みを使っていかにスケーラブルなビジネスを展開するのかという課題に向き合っていました。
今も変わっていない潮流として、このデジタル広告で恩恵を受けるのは、ダイレクトレスポンスを目的とした商品でいかにコンバージョンを効率的、かつ、より多く獲得できるかということがある中で、DMPもまた、その効果を最大化するような「商品」としての位置づけとなってしまっていましたね。
そのため、業界的に「DMPを使えば、効果改善しますよ!」という魔法の杖のような売り文句で営業をかける傾向があり、到底、本来のマーケティングの課題に寄り添ったものではない、商品営業に陥ってしまっていたかと思います。
Yahoo! JAPANの扱うデータ量は莫大です。DMPを維持するため、一つのことをやるにも数多くのプロセスを踏む工数的な問題がありました。ダイレクトレスポンス系で最終的な成果が出ると言っても、リターゲティングに勝るようなものではなく、社内ではコスト面での指摘がちらほら......。「コストのかかるDMPはそこまで事業貢献ができていない」と見なされてもおかしくはない状況もありました。
アドテクブームの流れの中で始まったDMPですが、今や「DMPを基盤としたデータマーケティングなくして、Yahoo! JAPANのマーケティングソリューションはない」ほどに、強化されています。その強化を継続できた要因は、広告主様や広告代理店様の課題に正面から向き合ってきたからだと思います。Yahoo! JAPANの中でデータによる広告主様の課題解決に熱心に取り組む人たちが探求・フォーカスし続けてきた成果であり、また、我々に対して広告主様が期待を持って下さっていた結果だと実感しています。
もはや「DMP」という言葉を手段の目的にすることは一切なく、「膨大なデータをどう使うか」ということが営業現場で当たり前になっています。約6年かかりましたが、社内で市民権を得ることができていると思います。
課題解決のための組織改革
データマーケティングを支える体制は?
私が率いているテクノロジーサービス本部では、広告主様の課題に対し、営業とともにデータ分析やAPIをはじめとする「技術を伴う」コンサルティング型の提案を実施しています。
この分野は、不可逆な流れで年々加速拡大傾向になっています。最近ではDX(Digital transformation)というキーワードがバズワード化していますが、それは今に始まったことではなく、技術の進歩が人の成長よりも格段に早く、そのスピードも年々加速化しています。
「技術を使い切れていない」という広告主様は多くいらっしゃいます。コンサルティングの分野は、必要不可欠なサービスになり続けるでしょう。サービスを改善し、より多くの広告主様に提供していかなければなりませんし、今までの「物売り」から「サービス売り」に体質を根本的に改善していかなければなりません。
そういった中で、今日明日の広告の最適化だけではなく、マーケティング行為そのものの最適化、最大化、効率化、ひいては事業課題に対してもYahoo! JAPANが向きあえる状態になれるよう、データ活用のコンサルティングのみならず、広告運用自動化のシステム構築支援などの体制を強化しています。この部隊をさらに強固なものにすることで、End to Endでお客様をサポートし、汗を流した、顔の見えるYahoo! JAPANとして、事業拡大の支援をしていきたいと考えています。
実際に行っている提案内容は?
提案に当たって大切にしていることは、広告主様との会話です。広告主様の課題にミートするものでなければならないことから、会話の質、つまり何の課題に対して話し合えるか、いかに早く答えや示唆を用意できるかが一番重要です。
広告主様の大きな成果に対して支援することを目指しているので、実施した一つのキャンペーン施策一つだけの結果だけでは、データ活用の成果は得られません。
例を挙げて説明します。まず一つ目は、商品関与度の高い某大手自動車会社様です。数年来、データ分析による示唆をしながらマーケティング課題に継続的に向き合っています。Yahoo! JAPANの検索行動や、デモグラフィックを掛け合わせた市場調査を基に、マスにおけるターゲットセグメントの策定、クリエイティブ検討、消費者が何を考えているのかをデータを軸に浮き彫りにしながら、目的に沿った、マーケティングプラン支援を車種ごとにしています。
最近では、「Yahoo! JAPAN第一想起分析」というサービスを提供しています。質問ベースのアンケートではなく、検索行動からブランドの第一想起をモニタリングするものです。ブランド想起から検討行動、最終コンバージョンの関係性を一連の流れで 説明できるなど、今では重要指標となっています。
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検索を用いた第一想起のイメージ
二つ目は、商品関与度の低い飲料食品系のメーカー様です。こちらに対しては、購買データを軸とした支援をしています。Yahoo! JAPANには、CCC様とのアライアンスによる3,000万規模の実購買パネルや、PayPayを通じたキャンペーンなど、より大きなマーケティングの仕掛けが行える土台が整いつつあります。
特定のビールを購買している消費者は、普段どんな商品と一緒にビールを購買し、どのようなシーンでビールを味わっているのか、どのようなライフスタイルなのかまで示唆することにより、市場調査、ターゲット策定、訴求方法の検討を支援しています。
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男性のノンアルコールビール購入者と全体購買者の併売特徴のイメージ
今では「Yahoo! JAPAN 購買効果分析」というサービスとして確立し、ユーザーインサイトから計測まで、オリジナリティのある実データを説明でき、さらに広告主様の課題に合わせてそれをカスタマイズできるところまで実現しています。
コロナ禍におけるマーケティング状況の変化
Withコロナで起こった変化について
急速な市場の変化の時期は、通常のスピード感では、課題解決が遅れてしまいかねません。
そこで、市場変化をリアルタイムに知らせるべく、市場の需要を可視化するダッシュボードの構築を行い、営業が広告主様と会話ができる状態を整備しました。Yahoo! JAPANが開発した約2,000種類ある「興味関心」項目でモデリングしたユーザー群を「需要」と捉え、昨年と比較してデイリーでどう需要が増減しているのかを可視化しました。例えば旅行について、緊急事態宣言後は一気に減少していますが、5月末からGo Toトラベルもあり需要が戻ってきたと思いきや、東京除外や第2波の影響で、需要が高まり切らない状態にあることが一目で分かります。
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「旅行・交通業界」の市場動向のイメージ
スピード感を重視した取り組みは、体制強化の成果の一部に過ぎません。半年ほど前からデータ活用基盤の整備を進めてきたことと、クラウドサービスで急な変化に迅速に対応できるようにしてきたことで、約1週間で企画からサービスインまで持ち込むことができました。
(後編に続く)
ソリューションについて、詳しくは以下をご覧ください。
プロフィール
ヤフー株式会社
マーケティングソリューションズ統括本部
テクノロジーサービス本部長
鍵山 仁
2014年ヤフー入社。2019年4月より現職。データ事業推進本部データビジネス推進部長、Yahoo! DMPサービスマネージャー、シナジーマーケティング株式会社 社外取締役等を歴任する。
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