【後編】「Yahoo! JAPAN 第一想起分析」を活用したデジタルブランディング
【シリーズ】Yahoo! JAPANが考える、Withコロナ時代のデジタルマーケティングとは?~ 11
「Yahoo! JAPAN 第一想起分析(以下、第一想起)」は、ブランディング効果の可視化を実現します。前編に引き続き、商品担当者であるメディアサイエンスチームの寺本に話を聞きました。
マーケティング上の効果について
実際の例として、各自動車メーカーが発売しているミニバンの車種に関して見てみましょう。
縦軸に「第一想起率(ユーザーが自動車購入の検討を開始した際に、最初にその車種が検索される確率)」、横軸に「検討カバレッジ(どれぐらいのユーザー群にその車種が検討されたのか)」を出した図を見てみると、第一想起率はそのまま一定の比率で検討カバレッジに直結します。つまり、どれだけのユーザー群に検討してもらえるかは、検討開始時点で勝負はついていると言えます。
実際の活用方法は
実際に企業のマーケティング活動に「第一想起分析」を活用する場合、大きく分けて二つの活用方法があります。一つはマーケットの可視化、もう一つは広告効果検証です。
マーケットの可視化とは、ブランディングの状況を可視化するという意味です。競合商品と自社商品の第一想起検索率や最終生存率を比較することで、そのブランド・商品の健康診断をすることが可能です。図はミドルクラスセダンの競合車種で第一想起分析に関する諸指標を比較したグラフです。こちらは第一想起率やカバレッジでは2位グループとなっていますが最終生存率は他より優れています。これは「いったん検討の選択肢に入ってしまえば最終的に生き残る確率が高いので、もっとブランディング活動を頑張って想起を上げることが大切」であることを示唆しています。
さらに、スナップショットで見る健康診断と合わせて、推移を時系列で追う事により「第一想起分析」を使ってマーケティングのPDCAを回していくことが可能です。一例として、トールタイプの軽自動車に関して、第一想起検索率の推移を週次で1年間追っていったグラフ(下図)を見ると、Aという車種の数値が平均して高く安定しており、強いブランドとなっています。BやCという車種がいろいろ新商品を投入してキャンペーンを行い、一時的なピークを作ってAを抜くのですが、すぐにAに抜き返されてしまいます。「真に強いブランドとなるためには点でのプロモーションだけでは駄目」という事を表しています。
次に、広告効果検証での活用方法ですが、広告に接触したユーザー群と、接触していないユーザー群のそれぞれが検討開始した時に、広告が訴求するブランド・商品をどれくらい第一想起したかを比較することで広告効果を検証することが可能です。この図は、とあるミニバンでディスプレイ広告接触による商品の第一想起率の変化を見たものですが、広告に接触したユーザー群の方が自動車検討時の第一想起率が2.3%ほど上がっています。
また、第一想起率が「どれだけのユーザー群に検討してもらえるか」にダイレクトに直結しているということは、コンバージョンとも深い関係がある、といえます。
図はSUV(指定5車種)のブランド・商品の検索について、「第一想起分析」で指定した自動車検討者が見積もり依頼をし、コンバージョンする確率を、パターン別に出したものです。競合車のみのパターンよりも指定車種が登場するパターンの方がコンバージョン率が高くなるのはもちろんですが2位以降に登場するよりも第一想起された方が高くなります。
今後の展望について
これまでのデジタル広告における効果検証において、分子となる指標は追求してきましたが、分母となるユーザー群の状態を分析するソリューションが弱かったという課題がありました。
例えば、ブランディング広告の成果を図るときに、広告接触者の検索がどれぐらい上がったか、つまり「サーチリフト」の計測をすることが多いと思います。生命保険を例にとると、同じようにブランドキーワード「〇〇生命」を含む検索だったとしても、「〇〇生命 評判」「〇〇生命 見積もり」など、加入を検討している場合もありますが、「〇〇生命 ログイン」や「〇〇生命 控除証明書」など、既存の加入者が検索している場合も多く、広告効果検証としてはノイズだらけになってしまいます。
「第一想起分析」であれば、母集団の定義としてもともと検討者に絞り込みを行っているので「広告接触によって検討者がどれぐらい増えたか」について、純度を高く検証することが可能です。
広告効果の計測指標は大分確立してきましたので、今後は「どうすれば想起が上がるのか」という「How to 想起」のノウハウの開発に注力していければと思っています。
そのための重要なキーの一つが、広告フリークエンシーです。デジタル広告では「ユーザーへのフリークエンシーは1回が一番効率が良い」と言われることがあります。実際に、ディスプレイ広告でフリークエンシーごとの反応率を計測すると、CTRは1回の時が一番良いですし、反応率(1回以上クリックしたユニークユーザー数/接触ユニークユーザー数)の伸び率もフリークエンシーが増えるごとに鈍化していきます。
そうなる裏側には顕在ユーザー層の存在が強く働いています。顕在ユーザー層はすでに検討を始めており、商品カテゴリーに関する情報を探しています。ディスプレイ広告に対する最初の接触の時点で反応する可能性が高いのです。一方で潜在ユーザー層についてはまだ検討活動を始めていないため、広告の存在を気づかせるためにはある程度のフリークエンシーが必要ではないかと考えられます。
今後は、どのような広告接触があった時に第一想起が伸びるのか、より深化させていきたいと思っています。
(おわり)
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ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部
営業推進本部 販売推進部 メディアサイエンス
寺本 伸行
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