必見! テクノロジーサービス本部長 鍵山仁が語る今後の戦略 ~【2021年】
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により世界は一変しました。インターネットユーザーの行動様式が明らかに変化した今、データマーケティングはどのように進化していくべきか? 2020年に引き続き、テクノロジーサービス本部長 鍵山に今後の構想を聞きました。
デジタルシフトとプライバシー対応のバランス
コロナ禍で、世界中の多くの企業が消費者への非接触による価値提供の方法を見いだし、非尋常なスピードでDXが進んでいるのは皆さんも目の当たりにしているかと思います。2020年度はデジタル銘柄の株価はものすごく伸びましたよね。ただ、それと同時にネット広告ではユーザーのプライバシーをどう守るかという話も、同じくらい重要に取り扱われていくようになってきていることも実感されているかと思います。
「プライバシー規制」について、欧米で進んでいるスタンダードが日本のスタンダードになるかどうかは、法整備や各事業者のデータを扱う取り組みによって影響されるので不確定なところも多いですが、確実に「クッキーレス」の時代は到来し、AppleやGoogleの動きも、独占禁止法の扱い方によって変動していくことになるため、広告事業に携わる事業者は全員不安定な時代に突入していくことになります。
ヤフー株式会社 テクノロジーサービス本部長 鍵山仁
言えることとしては、リターゲティングやこれまでの計測方法が、機能不全に陥ることでしょう。その背景については、DIGIDAY(外部リンク)にて詳しくお話していますので、ぜひそちらもご一読ください(笑)
では、Yahoo! JAPANとしては今後そのような時代に向けて、今、何を準備しているのか。
大きな市場の変化はあれども、私たちの目的はマーケティングをアップデートしていくことであり、それをユーザーのプライバシーに十分配慮した形で、私たちの持つアセットをデータソリューションやオリジナリティーのある指標づくりに価値変化させ、広告主の皆さまに納得感のある支援をしていくことです。
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データマーケティングと組み合わせた強力なPDCA
広告だけではなく、マーケティングを広範囲で支援するために、お客様に新たな発見を提示しながら事業貢献をしていきたいと思っています。
データマーケティングの浸透
2020年の記事では、芽の出てきたさまざまなソリューションを、より多くのお客様に届けるために、プロダクト、ソリューション、コンサルタントなど全ての側面から強化をしていくとお伝えしていましたが、それから1年が経過し、まさに多くのお客様にソリューションをお届けできるようになっています。
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データマーケティングソリューションの利用者数
現在では、約1000社のお客様に何等かの形でYahoo! JAPANからデータマーケティングソリューションの提案が実施されている状態にまで発展していまして、その基盤となっているプロダクトがSURGE(β版)です。
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SURGE(β版)イメージ
弊社のアナリストが開発した数多くの分析テンプレートを搭載していますが、まさにそういった分析官という人的リソースがいなくとも、データマーケティングの支援を広範囲に行えるようになりました。社内活用のβ版からUpdateし、今年の秋より広告代理店の皆様に正式にDS.LIBRARY(仮称)というプロダクトとしてリリースし、高頻度でPDCAを継続的に回していく予定です。
データマーケティングソリューション
そういったプロダクトリリースを控える中で、具体的に力を入れているのは、ファネル、インサイト、ターゲティング、メジャメントのそれぞれのプロセスを組みあわせてPDCAを高速に回せるソリューション群の開発です。今回はその一部をご紹介したいと思います。
1)ファネル
今までは、広告主のキャンペーンのタイミングで、プロモーション設計や、効果レポートをお出しするというお手伝いをしてきました。しかし「点」のお付き合いではなく、広告主の事業全体をパーチェスファネルに落とし込み、コンバージョンを起点にどう変動しているのか、ということを統一的な指標でモニタリングできるようなソリューションが重要と考えました。
そこで2021年4月、「コンバージョン予測ファネル」という新しいソリューションをリリースしました。これは「過去どうなっていたのか」という視点ではなく、「今後事業がどうなるのか」ということを、Yahoo! JAPANの膨大なデータを用いて予測するもので、人工知能(AI)を用いたパーチェスファネルだというところがポイントになっています。
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コンバージョン予測ファネルでナーチャリング
コンバージョンの近さを予測スコア化し、予測スコア別に階層化したオーディエンスボリュームをリアルタイムで確認できます。これを活用することで、需要のボラティリティ(いまどれだけの消費者が広告主さまの商品を求めているか)をモニタリングしながら納得感のあるマーケティングアクションが取れるようになります。
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来月の需要を予測して施策を準備
上記のように、コンバージョン予測スコアの高いオーディエンスのボリュームが時系列でどう変動しているかも確認できます。このコンバージョン予測ファネルを活用することで、さまざまな検証が行えます。
① 高予測スコアのファネルを太らせるために、上位ファネルから段階的に刺激
② 予測スコアごとのインサイト分析やクリエイティブを検討する
③ 広告の効果として、予測スコア分布にどのような影響が見られたのかを確認する
2)インサイト発見(消費者理解)
さきほどは、ファネルを可視化したものなので、各予測スコア段階にいるオーディエンスのインサイトを捉えるには、別のアプローチが必要になってきます。
インサイトはものすごく重要な部分で、「WHY(消費者の頭の中をイメージする)」を、どれくらいマーケターの皆さんが普段から検討されているかが顕著に分かりますし、その解像度を高めることで、その後の「WHAT(何を訴求すればよいか)」の質に影響する重要なプロセスです。
消費者の理解については、一番強みを提供できる領域です。コンバージョンや商品購入のデータをセットすれば、Yahoo! JAPANのあらゆる種類のデータをから、該当するユーザーが一体何に関心があるのかをあらゆる角度から一瞬で発見できるようになります。
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一発でユーザーインサイトを抽出、多角的に解釈可能
これらを今までは、弊社の分析担当者が手動で特定の広告主の皆さまだけに提供していましたが、この1年でプロダクト化を進め、多くの広告主の皆さまにもご利用いただけるようになりました。こちらの機能はすでに提供を開始している、DS.Insightというツールの中に今年度中にリリースをしていく予定です。
3)ターゲティング(ターゲット策定)
今までは、豊富なターゲティングメニューのみのご提供でしたが、データマーケティングソリューション(DMS)では、ファネル、インサイト、そしてメジャメントとセットでターゲティング使うことによって、ターゲティングの目的を顧客獲得単価(CPA)を安くするといった目的以外のシチュエーションにおいても、適切な目的で利用できるようになると思っています。
4)メジャメント(効果測定)
最後に、計測においては一番力を入れなければならないポイントです。 コンバージョンのCPAだけを見ていると、いつまでも新規のユーザーを取り囲むことはできません。一方で、より広範囲のユーザーに認知させ、見込客を育成しなければならないことはわかるが、急にコンバージョンをするわけでもないので、どう評価をすればよいかわからないので、そういった広告になかなか手を出せないという広告主の皆様の声を多く聞いてきました。
だからこそ、今回のデータマーケティングソリューション(DMS)のメジャメントソリューションを使っていただきたく思います。「ファネル→インサイト→ターゲティング」の結果として、どうだったのか?――これを振り返りながらPDCAを回していくことで、必ず全体のコンバージョン総量は増えるものだと確信をしています。
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広告の投下で、予測スコアがシフトしたか
冒頭に、コンバージョン予測ファネルの説明をしましたが、高予測スコアへのシフトに対して、広告の投下がどう寄与できたのかを、ファネルレポートで確認できます。
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広告の投下は、最終成果にどう寄与したのか
また、単体のキャンペーンでも、見込客を作るために、どれだけの広告がどのように寄与したのかを、コンバージョンとの関連性を可視化することで評価していきます。
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第一想起をとれているか、とったらどうなるか?
昨年の記事でもご紹介している、第一想起については、多くのお客様にご利用していただいており、自動車メーカーだけではなく、家電メーカー、不動産、旅行、金融、エンターテインメント、人材業界にまで拡大しており、まさに第一想起を計測しながらマーケティングのプロモーションの検討に継続利用していだいております。
どのようなキャンペーンでも一つのレポートだけを鵜呑み(うのみ)にすることなく、多面的に評価をすることが求められます。往々にして、準備したキャンペーンというのは、想定外の事象をもたらしますので、あらゆる角度から見て、どこにどう効果があったのかを検証することでマーケティング活動を見直します。
次世代のデータ活用マーケティングソリューション
マーケティングはこれまでになく、ユーザー群の囲い込みの重要度が増してきていますが、Yahoo! JAPANは、たまたま出会った広告でクリックをしてもらうというフロー型のビジネスモデルから脱却ができていません。
つまりそれは、広告主の皆様に出会いのきっかけだけを作ってさようならという、関係性の中でしか価値を感じていただけていなかったわけです。今後は、せっかく出会ったユーザーに広告主の皆様のサービスを継続して感じてもらえる関係性を築いていかなければなりません。
PayPayやLINEといった大きなユーザータッチポイントをもつサービスと連携ができる唯一のメディア企業なわけなので、それらアセットを活用したストック型のユーザーコミュニケーションを創造し、しっかりとこの課題に向き合っていきたいと思っています。
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出会いからエンゲージメントまで一気通貫で
フローからストックまでマーケティングプロセスにおいて、広告主の皆さまに求められる商品ができてくると、今回お話した、「データマーケティング」はさらに強固なものになっていくはずです。
これから創るZホールディングスの未来にぜひ期待していいただくとともに、既にあるソリューションを体感していただきたいと思います。
ヤフーは、マルチビッグデータカンパニーとして、データを活用したマーケティングソリューションを提供し続け、業界を牽引する企業として、皆さまの課題解決に貢献してまいります。
<プロフィール>
鍵山 仁(かぎやま ひとし)
ヤフー株式会社 MS統括本部 テクノロジーサービス本部 本部長
2014年ヤフー株式会社 入社。同マーケティングソリューションズカンパニーデータ事業推進本部プロダクトマーケティング部長 兼DMPサービスマネージャー、シナジーマーケティング株式会社 取締役、株式会社Handy Marketing 代表取締役などを歴任。2021年6月より、 株式会社Tポイント・ジャパン 取締役に就任。
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